日本初の再エネモデル事業、エネルギー消費の未来を切り開く
再生可能エネルギーの利用を最適化し、透明性の高いエネルギーマーケットの形成を目指す国際的な組織、EnergyTagが注目する日本発の事業がある。それは、株式会社電力シェアリングが推進する「環境省デコ活ナッジ実証事業」であり、これが日本のモデルケースとして国際的にケーススタディとして採用された。
デコ活とは?
「デコ活」とは、「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」の略称で、脱炭素(Decarbonization)と環境にやさしいエコ(Eco)を融合させた言葉だ。この運動は、日本全国で蔓延する二酸化炭素(CO₂)の削減に寄与し、持続可能な未来を築くための取り組みである。
電力シェアリング社は、このデコ活をさらに推進するため、独自の「DSナッジモデル」を用いて再エネ証書取引の活性化に取り組んでいる。これは、特に電力消費によるCO₂排出をゼロにすることを目指した環境省によるナッジ社会実証実験でもある。
再エネ需要の変動
日本においては、太陽光発電の急激な導入により、昼間の再エネの供給が余る一方で、夜間には不足するという深刻な問題が発生している。この状況では、太陽光発電所の出力が制御されるケースが多く、そのため電力システム全体での需給調整が必要だ。
電力シェアリング社は、このナッジ実証事業で「Hour Matching」の取り組みを行っており、再エネが豊富な時間帯に電力消費をシフトさせることで発電と消費のバランスを取ろうとしている。これは、電力需要家の利用機会を最大限に活用し、再生可能エネルギーの利用促進にもつながっている。
EnergyTagについて
EnergyTagは、2020年に設立された国際非営利組織で、再生可能エネルギーの利用を最適化するための国際基準を制定している。この活動には、GoogleやMicrosoftなどの著名な企業も参加しており、エネルギー消費の透明性を向上させるための施策が進められている。
特に、EnergyTagが策定した「グラニュラーサーティフィケート(GC)」は、エネルギー消費者が規制を遵守していることを示すためのもので、消費される1時間単位のエネルギーの特性を証明する役割を果たしている。定期的に独立した監査機関が評価を行うことで、透明性の高いエネルギー市場が形成されることを目指している。
日本のモデル事業の位置づけ
今回、電力シェアリング社のデコ活ナッジ実証事業は、EnergyTagのウェブサイトでも紹介されており、国際的な舞台でその取り組みが認められた。実際の活動内容としては、全国のスマートメーターシステムと連携したGC P2P取引プラットフォームの開発が進めらている。これは、太陽光発電を行うプロシューマーとその電力を受け取る消費者がスマートフォンを使って30分ごとに電力を取引する仕組みだ。
特に、AI技術を利用した先物取引形式での取引が行われ、電力取引の効率化を図っている。加えて、デュアルグリッドプロジェクトも実施されており、地域コミュニティにおけるGCの時間単位のマッチングを促進している。これにより、地元の発電者と需要家の間の関係を強化し、コミュニティ全体での脱炭素を実現することを目指している。
今後の展望
電力シェアリング社は、2023年度から、アジア太平洋地域を含む他国への展開も視野に入れている。特に、アジア開発銀行との連携を復活させ、途上国における再エネの普及と、その取引モデルの運用を進めて行く予定だ。
さらに、ナッジモデルの改良や行動インサイトの活用によって、時間帯別マッチングをさらに洗練させることを目指し、グローバルなスケールでの電力需給のあり方に対する提案を行っていく。これにより、持続可能な社会の実現に向けて大きな一歩を踏み出すことが期待されている。