ガザ地区の栄養不良の増加
2025年6月の報告によると、ガザ地区では栄養不良に苦しむ子どもたちが急増しており、特に生後6ヶ月から5歳の子どもたちが深刻な状況に置かれています。ユニセフ(国際連合児童基金)によると、5月だけで5,119人が急性栄養不良の治療を受けており、これは前月の3,444人から約50%の増加を示しています。さらに、停戦時の支援物資搬入前の2月と比較すると、150%も増加しているという深刻なデータが明らかになっています。
ハンユニス病院の現実
ガザ地区のハンユニスにある病院では、多くの子どもたちが重度急性栄養不良(SAM)に苦しんでいます。5月の治療を受けた5,119人の中には、636人が重度の状態にあり、彼らは生き残るために医療や安全な水、栄養が欠かせません。しかし、現在のガザではそれらが日に日に不足しており、多くの子どもたちが危険な状況に置かれています。
ユニセフ中東・北アフリカ事務所の代表エドゥアルド・ベイグベデルは、今年に入ってから5月末までのわずか150日間で16,736人もの子どもが栄養不良の治療を受けたことを指摘し、「すべてが予防可能な事例だ」と懸念を表明しています。支援物資の移動が阻止され、子どもたちに必要な食品や医療が届けられていない状況は、彼の言葉通りに命を奪う人為的な決定によるものです。
現状の悪化
この危機的な状況は今後数週間でさらに深刻化する恐れがあります。ユニセフは、急性栄養不良の増加が紛争開始以来の最高水準に達する可能性について警鐘を鳴らしています。約20ヶ月前には、この地域の子どもたちに消耗症がまったく見られなかったことを考えると、状況の急激な悪化がいかに重大であるかがわかります。
さらに問題なのは、水や衛生、医療に関わる重要な設備が損壊し、治療センターの多くが機能していないことです。ガザ地区では236カ所の治療センターのうち127カ所しか稼働していません。これでは治療を必要とする子どもたちが十分に支援されることは不可能です。
燃料不足の影響
国連機関は、燃料も深刻な不足に直面しています。停戦が解除されてから、新たな燃料の搬入が拒否されているため、医療や水の製造などの重要なサービスが停止する危機に瀕しています。これにより、急性水様性下痢症がガザで報告されている疾病の4分の1を占め、感染力の高いA型肝炎の疑いのある症例も増加しています。気温の上昇が見込まれるこれからの季節、特に子どもたちに深刻な影響が及ぶ恐れがあります。
緊急の対応が求められる
ユニセフはこの状況は緊急の警鐘であると強調し、栄養不良の増加や疾病の蔓延、さらには水の不足が続けば、全てが予防可能な子どもたちの命が危険にさらされることになります。いまこそ国際社会が協力し、迅速かつ安全に人道支援物資を必要とする家庭に届ける行動が求められています。また、ユニセフは暴力の停止、民間人の保護、人道支援の即時提供を再度訴えています。
結論
ガザ地区は現在、子どもたちが命を落としかねない危機的状況にあり、国際社会の注目と行動が急務です。ユニセフはこのような子どもたちへの支援を行うため、引き続き戦っていきます。