AIと受精卵予測
2025-10-23 16:50:07
AIによる受精卵の出生予測精度向上と不妊治療への貢献
はじめに
近年、不妊症は多くのカップルが直面する深刻な問題となっており、世界中で約8~12%の夫婦がその影響を受けています。この問題を克服するための手段として、体外受精をはじめとする生殖補助医療技術(ART)が重要な役割を果たしています。では、そのARTの成功率を向上させるためにどのような取り組みが行われているのでしょうか。最近、慶應義塾大学などの研究チームが注目すべき技術を発表しました。
新技術FL2-Netの開発
株式会社扶桑薬品工業と慶應義塾大学の共同研究グループが、マウス受精卵の特徴を分析するAIアルゴリズムFL2-Netを開発しました。この技術は、マウス胚の細胞核を高い精度で自動検出し、出生成否を81.63%の精度で予測することに成功しました。これにより、体外受精の際に選別する胚の質をより高精度で評価できることが期待されています。
体外受精の現状と課題
日本において、ARTによる出生率は2023年時点でわずか14.6%と、実に低い水準です。現在の体外受精では、専門家による目視と経験に基づく選別が主流であり、これは非常に主観的で時間がかかるプロセスです。特に、胚の選別においては胚培養士の熟練度によって結果が大きく異なるため、より客観的なアプローチが求められてきました。
FL2-Netの特長
FL2-Netでは、明視野顕微鏡を使用して撮影した時系列3次元画像データから細胞核を認識する技術を採用しています。このアルゴリズムは、豊富な細胞核の情報を取り入れつつ、連続フレームから時間的変動を考慮するため、これまでの技術を凌駕する精度を実現しました。また、受精卵に蛍光標識を必要とせず、通常の観察環境で使用可能なのも大きな利点です。
今後の展望
本研究はマウス胚に焦点を当てており、今後はヒト胚への応用が期待されています。成功すれば、臨床現場で受精卵を選別する際の専門家の意思決定をサポートし、体外受精の成功率向上に貢献する可能性が広がります。特に不妊治療を受けるカップルにとって、希望を持てる手段が増えることは非常に重要な意義を持ちます。
結論
本技術FL2-Netの開発は、ARTにおける新たな扉を開くものです。今後の研究成果がもたらす影響が非常に楽しみであり、体外受精に新たな風を吹き込むことが期待されています。慶應義塾大学や近畿大学、扶桑薬品工業などが共同で手掛けたこのプロジェクトは、社会全体にとっても希望の光となることでしょう。
会社情報
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学校法人近畿大学
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