木造建築を支える新しいツール「SynchroMOK™」
株式会社大林組が新たに開発したのは、「SynchroMOK(シンクロモック)」という計算ツールです。このツールは、特に中規模の木造建築における火災時の安全性を評価するために設計されています。木造建築の需要が高まる中で、その実現性を高めるための取り組みの一環として注目を浴びています。
1. 開発背景と木造化の現状
近年、木造建築物の利用が進む中で、特に3階建て以下の低層住宅では木造率が83.9%に達しています。しかし、中高層の建築物においてはその数値が0.1%にとどまるのが現状です。これは、公共インフラや大規模な建物における木造化に対するハードルが高いためです。
2050年のカーボンニュートラル目標に寄与するためには、これらの建物を木構造で設計することが重要です。しかし、規模や火災に対する安全性を確保するためには、木材の燃えしろの深さを計算したり、避難時における構造の安全性を検証する必要があります。これまでの方法では、この計算が複雑であるため、木造建築を実現する上での障壁となっていました。
2. SynchroMOKの特長
2.1 BIMとの連携
「SynchroMOK」は、BIM(Building Information Modeling)システムと連携して動作します。これにより、建築物の設計情報を高精度で活用し、計算を促進します。大林組では「Smart BIM Standard®」に基づいた一貫利用を推進しており、このツールがそのプロセスに加わることで、木造建築物の評価がより円滑に行えるようになります。従来の手法で必要だったデータ収集や評価が簡略化され、それに応じて設計時の効率も向上します。
2.2 効率的な燃えしろ深さ計算
また、SynchroMOKは、自動で構造データを抽出し、短時間で燃えしろ深さの計算を行います。例えば、5階建て、延べ面積2,500m²の建物において、従来では4時間かかる計算が、SynchroMOKを使用することでわずか30分程度に短縮されます。これにより、80%以上の省力化が実現し、建築確認申請にも対応可能になりました。
3. 今後の取り組み
大林組は、SynchroMOKを通じて木造化の実現性を評価し、中規模建築物に対する純木造の提案を進めていく方針です。従来の設計過程の見直しや自社開発の性能評価ツールとの連携を強化し、より効率的な設計作業を目指して取り組んでいきます。
このような新しい取り組みは、将来的に持続可能な社会への一歩となるでしょう。中規模の木造建築の普及が進むことで、環境への負荷を軽減し、カーボンニュートラルに向けた大きな力となることが期待されています。