電話越しの恋愛と事件の謎
藤石波矢による新作、小説『美しい探偵に必要な殺人』が2023年10月29日に発売される。この作品は、全編が“電話越し”の会話で構成された斬新なミステリー。雨の夜に繰り広げられる主人公と探偵の長い通話は、12年にも及ぶ愛と献身の物語を描いている。
物語は、主人公が高校時代に出会った美しい探偵、刀根美聖(とねみさと)に魅了されてから始まる。この思いはやがて助手としての献身へと形を変え、彼女を支え続ける日々が描かれる。電話の中で、四つの事件を追体験しながら、12年間の思いを語っていく。事件を追う中で浮かび上がるのは、ただの探偵と助手の関係ではなく、互いに育んできた感情の深さだ。
この全編電話越しのスタイルは、読者に一種の緊張感を与え、登場人物たちの心の距離感や思いをより一層際立てる。通話が進むにつれて、物語の舞台である探偵事務所や事件の背景が巧みに描写され、これまでの印象が変わっていく。その中で、優秀な探偵である美聖が抱える繊細な心情も垣間見える。
しかし、物語が進むにつれ、電話の会話が持つ意味が深まっていく。通話の最後には、一切の追憶が伏線となり、衝撃的な真実が明らかになる。この「どんでん返し」は、読者を一瞬にして驚かせ、これまでの全ての出来事が別の視点から再構築される。藤石波矢のミステリーストーリーは、過去の献身と未来の可能性が交錯する、感情豊かな作品に仕上がっている。
著者の藤石波矢(フジイシ・ナミヤ)は1988年に栃木県で生まれ、2014年にダ・ヴィンチ「本の物語」大賞を受賞してデビュー。以降も多くの作品を発表し、独自の視点から物語を展開してきた。本作もその集大成と言える。話題のイラストは、watabokuが手がけており、作品に一層の魅力を加えている。
『美しい探偵に必要な殺人』は、新潮文庫nexからの刊行で、定価693円(税込)で販売される。ISBN番号は978-4-10-180315-9。また、詳しい情報は
こちらのリンクで確認できる。ミステリーの名手、藤石波矢の新たな挑戦をぜひ手に取ってみてほしい。