象牙を使わない箏コンサートへの期待と意義
2025年10月31日、東京で「象牙を使わない箏コンサート~箏曲の地平線を望む夕べ~」が開催される。これは、アフリカのゾウの保護と邦楽の未来をつなぐ初のイベントであり、象牙問題についての重要な意義を持つ。
象牙問題の背景
国際的には、1990年にワシントン条約により象牙の国際取引が禁止された。しかし、その後もゾウの密猟は止まず、アフリカ大陸のゾウの数は大幅に減少してしまった。特に、サバンナゾウは70%、マルミミゾウは90%も減少したという報告がある。2016年には、象牙の国内市場を閉鎖することが決議され、多くの国々が実行に移した。しかし、日本では象牙の取引が続いており、国際社会からの閉鎖要請が高まっている。
日本国内には251トンもの象牙が存在し、これは世界の象牙在庫の約37%を占めている。このため、日本の象牙市場がゾウの密猟を助長する懸念が強まっており、環境団体はさらに象牙市場の閉鎖を求めている。
消費者の意識変化
最近の調査によれば、88.3%の消費者が「購入したい象牙製品はない」と回答した。また、64.1%の人が「象牙代替品を選ぶ」と述べている。これにより、日本の象牙需要が低下していることがわかり、成人消費者の意識には明らかな変化が見えつつある。
新素材の開発と演奏者の思い
今回のコンサートでは、新素材を使った箏爪が初披露される。竹由来のセルロースナノファイバー(CNF)を採用し、象牙の質感に近づいた製品が完成した。また、演奏者たちからは、この新しい素材によるサステイナブルな未来への期待が寄せられている。
箏奏者の明日佳は「今ある象牙を大切に使いつつ、サスティナブルな素材を考えていく時期だ」と語り、琵琶演奏家の水島結子も「素材の背景に目を向けることが大切」と述べた。これらの声は、象牙を使用しない新たな道を模索している証でもある。
コンサートの詳細
この特別なコンサートは、東京ウィメンズプラザホールで行われる。チケットは500円から購入でき、親子で参加できる企画も用意されている。
発表されるプログラムには、古典と現代の箏曲、さらにはアフリカの打楽器とのコラボレーションが含まれる。また、講演ではゾウの密猟と日本の象牙市場についての深い知識を得ることができる機会も提供される。
音楽を通じて、参加者が象牙問題について考え、さらには未来の邦楽の在り方についても考えるきっかけとなるだろう。この取り組みが、象牙による伝統楽器の使用を見直し、持続可能で平和な社会へとつながっていくことを期待したい。
再び、音楽を通じて地球を愛し、次世代へとつなげていくことが求められている。
開催が近づくにつれ、関心も高まるこのコンサート。日本の音楽界が環境問題にどう取り組んでいくのか、参加者全員がその未来を考える貴重な機会となるだろう。