ビフィズス菌M-16Vが有する脂肪酸の驚くべき効能
研究の背景
ビフィズス菌は我々の腸内環境を整える重要な存在として知られ、乳児から高齢者まで幅広く利用されています。この菌が持つ機能的な特性は、主にその細胞成分に起因していると考えられています。特に、細胞膜を構成する脂肪酸は、各菌株の特異性を生み出す重要な要素であり、これまでに短鎖脂肪酸についての研究が進んできましたが、中鎖や長鎖脂肪酸については研究が限定されていました。
この度、森永乳業と静岡県立大学食品栄養科学部との共同研究により、ビフィズス菌に含まれる脂肪酸の構成の違いが明らかになりました。研究の結果、40種類のビフィズス菌を持つ43株を分析し、菌種ごとの脂肪酸の違いを確認したのです。
研究内容と結果
脂肪酸プロファイルの違い
まず、研究では43株のビフィズス菌を培養し、菌体内の中鎖および長鎖脂肪酸を定量的に解析しました。その結果、脂肪酸の組成に基づいて4つのクラスターに分けることができました。特にクラスターⅠは最も多くの脂肪酸を含んでおり、続いてクラスターⅡ、Ⅲ、Ⅳと続く傾向が見られました。さらに、遺伝的な系統を元に脂肪酸の量を比較した結果、Bifidobacterium boum(B. boum)グループに属する菌株は特に脂肪酸を豊富に含むことが分かりました。
M-16Vの強み
中でもビフィズス菌M-16Vは、特異な脂肪酸「cis-7-ヘキサデセン酸」を高レベルで含有していることが確認されました。この脂肪酸は抗炎症作用があり、特にアトピー性皮膚炎に効果があるとされる黄色ブドウ球菌に対して抗菌活性を持っていることが知られています。本研究では、M-16Vがこの脂肪酸を多く生産することで、健康維持への寄与が期待されることが示されました。
研究の意義と未来の展望
この研究の結果は、ビフィズス菌の中でも特定の菌株によって脂肪酸のプロファイルが異なることを示しています。このような異なる脂肪酸組成は、プロバイオティクスおよびポストバイオティクスの機能にも影響を及ぼす可能性があります。特にM-16Vにおいては、抗アレルギー作用やアトピー性皮膚炎に対する効果が期待されるため、今後の製品開発に向けた重要な知見となるでしょう。
最後に、この研究成果は、2025年10月10日発行の「Bioscience, Biotechnology & Biochemistry」に掲載予定であり、今後の健康に寄与する高付加価値な製品の開発に向けたさらなる研究が期待されています。
結論
ビフィズス菌M-16Vは、その脂肪酸の特性から、健康維持に大きな役割を果たす可能性があります。今後の研究により、そのメカニズムが解明され、多くの人々にとってより良い生活をサポートする製品の開発につながることを期待しましょう。