世界初のケーブルレス人工心臓開発
近年、日本における心不全患者数は120万人を超える「心不全パンデミック」と呼ばれる重大な社会課題が浮き彫りになっています。これに対抗すべく、Helioverse Innovations Japan株式会社は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する2025年度「NEP躍進コース」に選ばれ、電源ケーブルのない人工心臓の開発を加速させています。
1. 世界初のワイヤレス人工心臓の実現へ
Helioverse Innovationsが開発を進めるのは、完全ワイヤレスの補助人工心臓です。この技術は、米国のCleveland Clinicや早稲田大学、国立循環器病研究センターとの連携により実現されました。これにより、患者が電源ケーブルに縛られず、より自由な日常生活を送ることが可能になるのです。
現在、人工心臓治療の5年生存率は70%を超え、既存の人工心臓には皮膚を貫通する電源ケーブルが必要ですが、その感染リスクが約22%とされています。ハードウェアのインフラを革命的に変えるワイヤレス技術があれば、これらの課題を大きく解決できる可能性を秘めています。
2. 現在の医療的背景
心不全は日本だけでなく、世界中で急増している病気です。心不全患者は2030年までに130万人に増加すると予測されています。この状況で新たな治療法の開発が急務となっているのです。近年の医療機器の進展は目覚ましく,例如、ペースメーカーの進化により、多くの命が救われています。しかしながら、高い電力を必要とする人工心臓のための電源ケーブルが依然として大きな問題とされています。そこで、ヘリオバースの新技術が注目される理由です。
3. 世界初の生体内ワイヤレス電源システム
この新たなワイヤレス充電技術により、体外から体内へ安全に電力を供給することが可能になります。さらに、低侵襲なカテーテル手術を用いて人工心臓を体内に埋め込むことができるため、身体的負担を軽減しつつ、感染リスクを大幅に減少させることが期待されています。
4. パートナーと連携した取り組み
Helioverseは、早稲田大学の岩﨑清隆教授や国立循環器病研究センターとの強固な産学連携により、臨床的な実効性を高めています。岩﨑教授は「人工心臓の駆動に必要な電力を完全にワイヤレスで供給できる技術は、患者の感染リスク低減と生活の質の向上に貢献する」と述べています。
5. 医療機器産業への影響
今回の技術開発は、日本が誇るエレクトロニクス技術や精密工業技術の結集を象徴しており、「医療機器輸出大国」の実現に向けた重要な試金石となることが期待されます。今後、同様の技術が人工腎臓や人工肺、さらには神経刺激装置などにも応用される可能性があります。
6. 患者の声
実際に治療を受けている患者からは、「入浴や旅行の制約がなくなれば、もっと普通の生活ができる」といった期待が寄せられています。また、体調管理や仕事との両立が課題とされる年代層からも、治療を受けながらも自分らしい生活を送りたいとの声が多く聞かれます。
7. 今後の展望
Helioverse InnovationsのCEO、黒田太陽氏は「ワイヤレス技術は単なる改良ではなく、体内エレクトロニクスの新しい時代を開く技術として、世界中の患者様に革命をもたらすと信じています」と語っています。2030年には臨床試験を開始する予定で、技術が実用化されることにより、患者にとってより良い未来が開かれることが期待されています。
日本発の医療イノベーションが、世界の医療の枠組みを変えていく時が来ているのかもしれません。