企業価値を高める従業員エンゲージメントの重要性とは
株式会社リンクアンドモチベーションのモチベーションエンジニアリング研究所が、企業における従業員エンゲージメントデータの活用可能性についての分析結果を発表しました。この研究は、みずほ第一フィナンシャルテクノロジー株式会社およびアスタミューゼ株式会社との共同で行われ、企業の非財務情報を活用した新たな価値評価の手法に焦点を当てています。
研究背景と目的
近年、企業価値を測る上で従来の財務指標だけでなく、無形資産に焦点を当てる必要性が高まっています。特に、「人的資本経営」という考え方が注目を集めており、企業の中で人材が持つ価値を最大限に引き出すことが求められています。従業員の士気やエンゲージメントが企業のパフォーマンスにどのように影響するかを探るためのデータ取得は提案されているものの、実際の分析は難しいのが現状です。
そこで、国内で最大規模の従業員エンゲージメントサービスを展開するリンクアンドモチベーションが、この重要なテーマに対して共同研究を実施しました。
分析結果の概要
1. エンゲージメントスコアと財務指標の相関関係
研究の中で最も注目されるべきポイントは、エンゲージメントスコア(ES)とROE(自己資本利益率)との関係です。データに基づき、継続的に高いESを持つ企業は、同様に高いROEを示す傾向があることが分かりました。この結果は、従業員エンゲージメントの高まりが結果的に企業の財務状況に良好な影響を及ぼす可能性を示唆しています。
2. エンゲージメントとROEの相関の掘り下げ
調査はさらに進み、ESの変化がどのようにROEに影響を与えるかを詳しく調べました。特に、「事業の成長性や将来性」に対する社員の理解と納得感が、業務への意欲を高め、それが利益成長につながり、最終的にROEが改善されるプロセスが明らかとなりました。これにより、企業としての戦略目的に対する納得感が長期的な成果につながっていることが示されました。
3. 遅延効果の考察
また、エンゲージメントの変化に対するROEの遅延的な変動に関しても考察が行われ、「ROEがエンゲージメントに影響を与える」という逆説的な見解が否定された点も重要です。これは、従業員の士気が企業の業績に直接的に結びつくことを示す証拠になります。
今後の展望
企業価値分析にエンゲージメントデータを用いることは、今後も重要なテーマとなるでしょう。リンクアンドモチベーションは、得られたデータを基にしたポートフォリオ構築の研究を続けるとともに、他の人的資本データとも組み合わせることで、より多面的な企業価値評価を行っていく予定です。
このように、従業員エンゲージメントの重要性は、今後の企業経営においてますます増していくことでしょう。企業の持続可能な成長を図るためには、エンゲージメントを高める施策が欠かせません。今後の動向に注目です。