葬送一体型台車「Full Moon」が受賞
2025年度のグッドデザイン賞において、葬送一体型台車「Full Moon」が選ばれました。この商品は、NKC、株式会社kaimen、株式会社GK京都、株式会社コンセントの4社のコラボレーションによって開発されたものです。特に、今回の受賞は「グッドデザイン・ベスト100」にも選出されたという点で、デザインの優れた価値を示しています。
「Full Moon」とは?
「Full Moon」は、従来の棺台車と収骨台車を一つに融合した新しい形式の葬送台車です。NKCは長年にわたって公共火葬場向けに高い市場シェアを持ち、葬送インフラの領域で広く名を馳せています。「Full Moon」は、過去5年の現場観察を基に、葬送システムの革新を図りました。
開発の背景
日本の火葬場は、戦後の復興期に整備されたため、老朽化が進んでいます。また、火葬需要予測では、2040年前後に高齢者人口がピークを迎え、その後は死亡者数が減少する見込みです。これにより、火葬場の更新や新設が必要ですが、財政的な負担が自治体にとって課題となっています。そのため「Full Moon」は、持続可能な葬送インフラとしての役割を担うべく誕生しました。
デザインと機能
火葬場では通常、棺を運搬する棺台車と遺骨用の収骨台車の2台を使用していますが、この二つを統合したのが「Full Moon」です。これにより、保管スペースの効率化や動線の柔軟性が大幅に向上しました。加えて、外装は無機質さを抑え、葬送儀式に調和する美しいデザインが施されています。
特に、葬送の質に対する考え方が変化している中で、「Full Moon」は一般的な儀式形式に依存しない新たな選択肢を提供します。これにより、使用場面でより人間味が感じられる尊厳のある空間が作られています。
実戦投入の進展
すでに愛知県の斎場での導入が決定しており、全国の火葬場での使用検討も進められています。このような実装が進むことで、社会的課題を解決する新しい葬送インフラの役割を果たすことが期待されています。
開発体制
「Full Moon」は、NKC Business Design Centerの長﨑陸氏と高橋一仁氏を中心に、各企業の専門知識を結集して開発されました。デザイン経営における「CDOs」という組織を形成し、4つの品質(企業価値、体験品質、開発品質、営業品質)を高めることを目指しました。
このアプローチは、火葬に関する構造的な課題を解決する上で、非常に価値のある提案された技術です。
評価の声
グッドデザイン賞の審査委員からは、「棺台車と収骨台車を一体化し、葬送の動線、儀式性、省スペース化を実現した革新的なインフラ」と評価されました。「Full Moon」は、文化や宗教の違いを越えて、人々が最後の別れをする場面において、尊厳をもって提供されるものとなるでしょう。
今回の「Full Moon」の受賞は、未来の葬送文化における重要な一歩を示しています。
今後も「Full Moon」の進展に注目が集まることでしょう。