新たな光を放つ『フェルメール』
2018年9月25日、植本一子の美術書『フェルメール』がついに発刊されます。この本は、現存するフェルメールの全作品を巡る旅を記したもので、異なる視点からフェルメールを再認識させる画期的な作品集です。出版は、写真集や詩集で知られるナナロク社と、展覧会や図録制作を手掛けるブルーシープが行います。この2社によるコラボレーションは、さらなる注目を集めています。
植本一子は、国内外での評価が高い写真家・文筆家であり、彼女の作品には常に深い洞察と感受性が表れています。本書では、彼女が7カ国17の美術館を巡り、フェルメールの真作と対峙する姿が描かれています。この旅はおよそ3週間に及び、訪れた国にはアムステルダム、ウィーン、ベルリン、パリ、ロンドン、ダブリン、ニューヨーク、ワシントンなどが含まれていました。
フェルメールは、17世紀オランダの巨匠であり、「光の魔術師」とも称される存在です。彼の作品は現存するものが35点ほどとされ、どの作品も静謐で神秘的な雰囲気を持っています。植本は、それぞれの絵を前にじっくりと向き合い、構図やモチーフ、使用されている絵の具、さらには画家の思想と息遣いに想いを巡らせます。このように、彼女の視点を通して、フェルメールの美術がどのようなものであったのかを、読者に感じさせてくれます。
特に目を引くのは、「真珠の耳飾りの少女」や「手紙を書く婦人と召使い」など、彼女が各国で目にしたフェルメールの名作についての詳細な観察です。写真や言葉でその瞬間を切り取り、同時に観衆との関わりも記録しました。
紀行文から抜粋した彼女の感想は、もちろん興味深いものです。特に「真珠の耳飾り」を見ることになった瞬間の高揚感や、実際にその作品の前で圧倒された思いが伝わってきます。また、アメリカ・ワシントンで出会った観光客の光景も、作品を取り巻く人々の反応や感情を映し出しています。これにより、フェルメールの作品がどのように私たちの心に響くのかを知る貴重な機会となっているのです。
本書『フェルメール』の刊行に関連して、同時に「フェルメール植本一子」展も開催される予定です。展示会では、植本が本書のために撮影した写真約100点と紀行文の一部が発表されるとのこと。出版に先立ち、一般書店での先行発売も行われるので、これに合わせて訪れることをおすすめします。
この新しい美術書は、フェルメールをより多面的に理解するための架け橋となることでしょう。そして、フェルメールの作品が 別の角度から楽しめる良い機会になるのではないかと思います。興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。
発行概要
- - 発行日: 2018年9月25日
- - 価格: 2000円(税別)
- - 判型: B6判変形、288ページ予定
- - 発行: ナナロク社+ブルーシープ
ページをめくるごとに、フェルメールの美しさとその背景にある物語が鮮やかに浮かび上がることでしょう。ぜひ、彼の絵画の世界に触れてみてください。