WHO推奨アルゴリズムが小児結核治療を革新する時代が到来

小児結核治療の革新に向けて

ウガンダの医療施設での診察を受ける乳児の姿が、国境なき医師団（MSF）の新プロジェクト「TACTiC」の重要性を物語っています。2025年の「世界肺の健康会議」では、MSFがこのプロジェクトの研究データを発表し、WHOが推奨する治療決定アルゴリズムを導入することで、命を守る治療が迅速に行える可能性が示されました。

治療の必然性

WHOのアルゴリズムにより、結核の疑いがある場合、医師は検査結果が陰性であっても治療を開始できます。この取り組みによって、実際に治療を受けられる子どもの数はほぼ倍増するという期待が高まっています。特に、ウガンダを含む5か国で行われたTACTiCプロジェクトでは、1846人の子どもを対象に試験を実施。この調査の結果、通常の診断方法では見逃されてしまった結核の兆候を、アルゴリズムが的確に捉え、治療開始の機会を2倍に引き上げたのです。

結核の症状とは

結核と言えば咳が代表的な症状とされますが、実際には他にも様々な兆候が存在します。「咳がないから結核ではない」とする従来の診断方法が、子どもの命を危険にさらしていたことが明らかになりました。MSFのアンジェリン・ドレ医師は、咳以外にも結核の兆候があることを強調し、そこでの診断の重要性を訴えています。実際、子どもが咳以外の症状があっても見過ごされてきたケースが多いため、早期診断と治療が急務です。

政府の取り組みがカギ

2024年、15歳未満の若年層約120万人が結核にかかると推計されていますが、子どもたちの多くは診断を受けていません。これは、現行の検査方法が成人向けに設計されているため、子どもたちに適切な診断ができないからです。WHOによれば、結核に罹った子どもの43％が治療を受けずに命を落とす危険にさらされています。最新のガイドラインで、X線検査に頼らず治療決定アルゴリズムを利用することが推奨されていますが、多くの国でその導入は遅れています。MSFのヘレナ・ウエルガ医師は、科学的根拠に基づく迅速な導入と、政治的意志の必要性を訴えています。

持続的な支援を求めて

MSFは、世界的な援助資金の減少が結核治療における格差を生む懸念があると警鐘を鳴らしています。国際的な支援団体や各国政府に対して、特に幼い子供たちの治療へのアクセスを保障するための持続的な資金提供を呼びかけています。プロジェクトリーダーのダニエル・マルティネス・ガルシア氏は、治療決定アルゴリズムの迅速な採用とその実施が重要であるとし、すべての子どもが治療を受ける道を開くための必要性を訴えています。

TACTiCプロジェクトの意義

「TACTiC（Test, Avoid, Cure TB in Children）」は、MSFが取り組む小児結核ケアの革新を目指すプロジェクトです。対象国には、結核負担が高い国が含まれ、最新のWHOの推奨事項を実施することによって、科学的根拠に基づく診断と治療を目指しています。今後の展開に期待が寄せられる中、TACTiCプロジェクトは全世界の子どもたちの命を救うための重要な一歩となるでしょう。