戦後80年の思いを込めた新刊
戦後80年、今私たちに何ができるのか。2025年7月19日、株式会社KADOKAWAから新刊『わたくし96歳が語る 16歳の夏 ~1945年8月9日~』が発売される。この本は、著者森田富美子氏が自身の被爆体験を語り、後世に伝えるために書かれたものである。富美子氏は1929年に長崎で生まれ、16歳の時に原子爆弾の被害に遭った。両親と3人の弟を失い、戦争の苦い記憶が脳裏に焼きついている。彼女は長い間、戦争のことを語らずに過ごしてきたが、90歳を越えたある日、自らの過去と向き合う決心を固める。
語り始めたきっかけ
富美子氏の思いは、『カタリベ』となることで具現化された。「2019年8月、私は90歳になりました。それをきっかけに、それまで語らなかった戦争体験、被爆体験を語っていこうと決心しました。」彼女の言葉を聞き取るのは、長女の森田京子さん。京子さんは母の話を文書化し、二人三脚で本を完成させることになった。
それは、単に母娘の共同作業ではなく、歴史を未来に伝える重要な使命であった。戦争を知らない世代に、その悲しみや苦しみを理解してもらうための努力が必要だった。
SNSでの発信がもたらした変化
2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻が、富美子氏の活動に新たな影響を与えた。彼女はX(旧Twitter)で「20歳の女性が渋谷の反戦デモに参加した」との投稿を見つけ、その心情に深く共感した。自身が経験した戦争の悲劇を、閉じ込めずに多くの人々に伝えたいと考えたのだ。この投稿は9万件以上の「いいね」を受け、多くの人々に届いた。
本を通じての思い
新刊は、富美子氏が過去の出来事を整理し、言葉にする過程が描かれている。その中で彼女は数々の苦悩と対峙し、時には叫びたくなることもあった。しかし、彼女は「もう誰にも経験させてはいけない」「決して繰り返してはいけない」という強い想いを胸に、あくまで「語り続ける」との意志を持ち続けた。
また、この本の制作過程には多くのイラストが収められている。イラストレーター・ながしまひろみ氏とのコラボレーションにより、戦争の悲劇を視覚的にも伝えようとした。言葉と絵が一つになることで、メッセージはより深まる。
特典情報
この書籍をAmazonで予約した方には、平和への祈りを込めた特別な描き下ろしイラストデータのプレゼントもある。ぜひこの本を通じて、戦争の記憶を受け取り、過去を忘れないための第一歩を踏み出してほしい。
著者プロフィール
森田富美子氏は、1929年生まれで長崎で被爆。2007年に長崎から東京へ移住し、SNSを通じて自身の戦争体験を発信している。フォロワーは8.4万人を超え、その言葉は多くの人々に力や勇気を与えている。京子さんは母の体験を聞きながら、平和の大切さを伝える仕事に従事している。
この本を読むことで、私たちは歴史を知り、未来を考えることができる。戦争の記憶を受け継ぐことの意味を、一人ひとりが深く考える機会となるだろう。