鈴木宣弘の新著『令和の米騒動食糧敗戦はなぜ起きたか?』が描く食の未来
2023年の10月17日、文春新書から鈴木宣弘氏の新しい著作『令和の米騒動食糧敗戦はなぜ起きたか?』が刊行される。食料安全保障の分野における第一人者である鈴木氏が、この書を通じて、「令和の米騒動」と呼ばれる深刻な状況についての分析と、それに対する提言を行っている。
この本の背景には、日本の食料事情の厳しさがある。最近では、スーパーから米が姿を消し、米の小売価格は過去最高を記録するなど、困難な状況が続いている。このような事態に対し、政府は備蓄米の放出や輸入の拡大を図ったものの、根本的な問題は依然として解決されていない。
米騒動の真の原因とは?
鈴木氏は、本書の中で米騒動の原因が農協の流通問題や一時的な生産量の低下といった表面的な要因だけではなく、長年の減反政策に起因する農政の失敗であると指摘する。日本の農業は長い間、政府の政策によって生産調整を強いられ、その結果、農家は疲弊し、供給不足に陥った。
また、温暖化に伴う不作も影響を与えているが、根深いのは低い米価の持続による農家の困難な状況だ。高齢化も農業の持続可能性に影を落としている。このような構造的な問題に対し、早急な解決策が求められていることを鈴木氏は強調する。
私たちの食料安全保障に何が起きているのか
日本が過去に自給率100%を誇っていた米は、今や崩壊の危機に面している。この数年、パンデミックや国際的な紛争が相次ぎ、アメリカとの関税交渉の過程で米の輸入拡大傾向を余儀なくされ、国内の農業にさらなる負担をかけている。日本の食の未来は暗雲が立ち込めている。
具体的な対策はまだ見つからないのか
鈴木氏は、単に「規模拡大」や「スマート農業」を訴えるだけでは危機を解決できないと警鐘を鳴らしている。具体的で実効性のある対策が求められていることは明白だ。本書の中では、解決策を探るための構造分析と、実行可能な提言が展開される。
農業とコミュニティの未来
鈴木氏は、本書を通じて消費者にも考える機会を提供したいと考えている。農業は私たちの食文化の根幹を支えるものであり、その維持と発展には全ての人々の理解と協力が必要だ。この新しい著作が、より多くの人々に食の安全保障について考えさせ、討論を促すきっかけになることを願っている。
著者は、東京大学で農業経済学を教えた後、多くの著書を通じて日本の農業問題に鋭い視線を向け続けてきた。鈴木宣弘氏の新著は、令和時代の農業と食の未来を見つめるための必読書と言えるだろう。