カスタマーハラスメント対策研修の新展開
近年、カスタマーハラスメント(通称カスハラ)の問題がクローズアップされています。多くの企業がこの深刻な問題に直面しており、効果的な対策が求められています。特に、国や自治体が積極的にマニュアルを公開するなど、社会全体での対策が急務とされる中、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会が新たに「カスタマーハラスメント防止研修」を開始しました。
アンガーマネジメントでの解決策
この研修は、相手の怒りに振り回されず適切かつ冷静な対応をするためのスキルを身につけることを目的としています。昔から自分の「怒り」をマネジメントすることが重要視されてきただけに、今回の取り組みとも深く関係しています。アンガーマネジメントは、1970年代にアメリカで発展した心理トレーニングで、怒りの感情に対処する方法を学ぶ手法です。日本では昨今、急速に浸透し、教育やビジネスシーンでの活用が増えています。
この研修を通じて、従業員はカスタマーハラスメントの具体的な対応策や、クレームとカスタマーハラスメントを見極める力を養うことができます。また、対応後にストレスを感じない方法を知り、必要以上の怒りを抱かないための心構えも身につけられます。
業界の状況
実際、2023年5月に発表された厚生労働省の調査によると、過去3年間で約10人に1人がカスハラを受けた経験があることが明らかになっています。さらに、カスハラに対する対策を行っていない企業は35.5%にも及び、これからの課題が浮き彫りになっています。また、カスハラに関する基本方針を発表した企業は多いものの、具体的な実践研修を求める声も高まっています。
研修の特徴
この研修は、90分から1日まで柔軟な対応が可能で、受講人数に応じてプログラムをカスタマイズすることもできます。受講者は、怒りの感情とどのように向き合うか、そして怒っている顧客に対しどのようにアプローチすべきかを学ぶことができ、実践的なスキルを習得できます。さらに、受講後には「アンガーマネジメントカスタマーハラスメント対策アドバイザー」として認定され、企業内での研修を行うことが可能となります。
このように、アンガーマネジメントを活用したカスタマーハラスメント対策は、組織全体のハラスメント対策にも寄与し、健全な職場環境の構築を促進します。さらに、こうした取り組みを通じて、従業員一人ひとりが自信を持って顧客対応を行うことができるようになれば、企業全体のイメージ向上にも繋がります。
研修の目的
日本アンガーマネジメント協会の代表理事、戸田久実氏は、「怒りの連鎖を断ち切り、社会にハラスメントのない環境を作るためにも、この研修の重要性を多くの企業に理解してもらいたい」との意気込みを述べています。学びを通じて、従業員自身だけではなく周囲への影響をも最小限に抑えつつ、産業界全体での問題解決を目指しているのです。
自社の労働環境を守るためにも、今後の研修の実施を検討される企業は多いでしょう。アンガーマネジメントを取り入れることで、痛ましいカスハラの連鎖を断ち切り、より良い職場を実現する一助となることを期待します。