高齢者の経済的ゆとりと生活の楽しさの変化
株式会社日本能率協会総合研究所が2024年10月から11月にかけて実施した高齢者「きもち」調査の結果が発表されました。この調査は、60歳から90歳の高齢者を対象とし、彼らの生活に対する意識や楽しさ、経済状況を定量的に分析することを目的としています。
調査の背景と目的
調査の背景には、近年の物価高や経済的環境の影響があります。高齢者の生活にとって、経済的なゆとりは重要な要素であり、それが趣味や楽しみの範囲にも直接的に影響を与えます。特に、将来的な老化に対する考え方や健康維持の意識が、経済的な選択にどのように影響しているかを探ることが焦点となっています。
調査結果の概要
1. ポジティブな老化観
調査結果によると、女性の70代の約75%が「年をとっても老化が進んだなりに人生を楽しめる」と考えています。これは、女性が男性よりも高齢になってもポジティブな受容姿勢を持っていることを示しています。また、年齢が上がるにつれてポジティブな意識が低下する傾向も見られます。
2. 経済的なゆとりの減少
経済的なゆとりを感じている家庭は、3年前と比べて減少傾向が明らかとなりました。「経済的なゆとりがある」と感じる家庭は全体でわずか25%にとどまり、特に女性の80代ではその割合が約50%に跳ね上がっています。これは今の物価高が影響を与えていると考えられます。
3. 海外旅行への魅力の低下
調査では、「海外旅行への楽しさや喜び」が大きく減少しています。特に70歳代の男性では、この感情の割合が58%から46%に低下しました。これは、旅行にかかるコストや経済的な不安感が旅行意欲を減退させていることが要因として挙げられます。
4. 健康への支出意欲の微増
一方で、健康や老化防止に向けた支出意欲は微増しています。特に、健康維持のために投資したいという気持ちが強くなっていることがデータから伺えます。男性の約40%、女性では約46%が今後も健康に投資したいと回答しました。
5. 自分の歯を大切にしたい
「高齢になっても自分自身の歯を維持したい」という考えに対しては、8割以上の高齢者が積極的に賛同しています。この意識は非常に高く特に70代の女性では9割以上にのぼります。
結論
本調査からは、高齢者が経済的に厳しい状況にある一方で、健康や老化への意識は向上していることが分かりました。多くの高齢者が老いを受け入れつつ、より良い健康状態を維持したいと願っていることは今後の社会においても重要な視点です。今後も定期的にこのような調査を行い、高齢者の実態に基づいた社会制度やサービスの発展に寄与していくことが求められます。
この調査の詳細な結果に興味がある方は、株式会社日本能率協会の公式ウェブサイトを訪れて、レポートを購入することができます。