日機装、新たな医療用酸素製造プラントを発表
日機装株式会社(東京都渋谷区)は、東アフリカにおける医療用酸素供給の向上を目指す重要なプロジェクトを発表しました。このプロジェクトは、国際機関Unitaid(ユニットエイド)が推進するもので、日本政府が730万米ドル(約10億円)を支援します。これにより、ケニアとタンザニアに医療用酸素製造プラントを設置し、地域の医療環境を大幅に改善することを目的としています。
プロジェクトの背景
世界保健機関(WHO)が支援するユニットエイドは、特に低・中所得国において、質の高い医療サービスへのアクセスを拡大することを目的に活動しています。近年、コロナ禍による医療用酸素の需要急増が各国で問題視され、現在もサハラ以南のアフリカでは深刻な供給不足が続いています。このプロジェクトでは、東アフリカにおける医療用酸素の生産能力を300%向上させ、価格を27%引き下げる目標が掲げられています。
プラントの設置先とその特長
設置されるプラントは、ケニアのナイロビとモンバサ、さらにタンザニアのダルエスサラームの3カ所です。使用されるのは深冷式空気分離装置(ASU)で、この装置は気体の沸点差を利用して高純度の液化酸素を製造します。医療用酸素は手術や救急医療、呼吸器疾患の治療に不可欠であり、特に酸素の安定供給が求められています。
液化酸素は大量保存が可能で、気化する際には電力を必要としないため、電力供給が不安定な地域でも利便性が高いのが特長です。また、CE&IGグループが開発したモジュール方式により、現地でも簡便に設置することができ、医療機関は安定した酸素供給を受けられるようになります。
期待される効果
このプロジェクトによって、ケニアとタンザニアでの酸素供給が強化され、最大154,000人の命が救われる可能性があります。地域の医療ニーズに応じた持続可能な酸素製造体制の構築が期待されており、将来的には他のアフリカ諸国への供給も視野に入れています。
日機装の代表取締役社長、加藤孝一氏は、「医療用酸素の製造支援を通じて、地域の医療環境の改善に寄与することを誇りに思います。今年のプロジェクトを通じて、私たちは全力で地域医療の発展に寄与していく考えです」と述べています。
ユニットエイドの役割
ユニットエイドの事務局長、フィリップ・デュヌトン氏も、「この取り組みを通じて、地域の製造業者を支援し、長期的な医療ニーズに応える持続可能な市場を築いていく方を目指しています」と話します。彼の言葉は、このプロジェクトがもたらす地域経済の強化と医療支援の持続可能性を示しています。
医療用酸素の重要性
医療用酸素は、呼吸器疾患や手術の際に命を救うために必須の医薬品ですが、現在も多くの低・中所得国での供給が不足しています。特に2021年以降、コロナウイルスの影響により必要とされる医療用酸素の需要が急増し、多くの患者が治療を受けられない事態が発生しました。このプロジェクトの成功は、今後の医療危機への備えと地域間の医療連携を促進する大きなステップとなるでしょう。