2025年Q2の東京オフィス市況レポートに見る将来の展望と課題
2023年10月、クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(C&W)が最新の東京オフィス市況に関するレポートを発表しました。このレポートでは、2025年第2四半期の展望を詳述し、オフィス市場の現状と今後の予測を示しています。以下では、その重要なポイントを解説します。
アウトルック:安定成長の見通し
C&Wのレポートによれば、今後2年間の東京都におけるオフィスワーカー関連産業の従業者数が年平均約1%(年間約1万人)の増加傾向が続くと予測されています。特に、2025年第2四半期までに新たに供給されるオフィスビルの内定率は75.3%に達する見込みで、これにより空室率が大幅に上昇するリスクは低いと評価されています。空室率は今後2年間で2%未満を維持する見通しであり、需要は引き続き安定しています。
また、一部のサブマーケットでは賃料の上昇ペースに鈍化の兆しが見られますが、新規供給の減少が予想される2026年から2027年ごろには、供給がよりタイトになるため、賃料の上昇傾向は続く見込みです。想定成約賃料は今後2年間で年平均約5%上昇する予想です。
経済面:求められる需要の拡大
2025年の日本の実質GDP成長率は前年比約0.7%と見込まれており、2024年の0.2%を上回るとされています。とはいえ、米国の輸入関税政策や世界経済の動向が懸念材料となっています。とはいえ、原油価格の下落がコストを抑制し、日本国内の非製造業を中心に企業収益は高水準を維持しています。2025年度の経常利益は前年比でマイナス2.1%との予測ですが、それでも過去10年の平均を約25%上回っており、企業の賃料負担能力は堅調との見解が示されています。
東京都内の就業者数は全国的に見ても増加傾向にあり、2019年第1四半期から2025年第1四半期にかけて年平均0.8%の増加が見込まれています。また、オフィスワーカー数は同期間中に年平均1.4%の増加が予想されており、それに伴いオフィス需要も増す見込みです。
需給:空室率2%を下回る見通し
2025年第2四半期末には都心5区のグレードAオフィスの年間ネット・アブソープションが前年比約2倍の22.3万坪に達する予測が立てられています。この影響で、空室率は低下が進み、2021年3月以来初めて1%台になると考えられています。自社ビルやグレードB以下のオフィスから、より高品質なビルへの移転が顕著であり、過去1年以内に完成した新築ビルの内定率は85.8%となっています。
賃料の動向:さらなる上昇が期待される
2025年第2四半期において、都心5区グレードAオフィスの平均想定成約賃料は前年同期比6.7%上昇し37,639円に達すると予測されています。これは募集賃料の上昇幅(同6.3%)を上回るもので、空室率の低下や建築費の上昇が要因とされています。特に、芝浦・海岸や品川・港南口といったエリアでは賃料が大きく上昇しています。
今後の市場動向について留意しながら、企業は賃料や物件選定において適切な戦略を立てる必要があります。それにより、オフィスビルの選定や契約交渉での競争力をいかに確保するかが重要な課題となるでしょう。
まとめ
クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドのレポートは、東京のオフィス市場の全体像を把握するための重要な指標となります。これにより、企業や投資家は今後の動向を見極め、適切な対策を講じることが求められています。引き続き市場を注視し、変化に柔軟に対応することが重要です。