河﨑秋子の新刊エッセイに迫る
第170回直木賞を受賞した作家、河﨑秋子さんが新たに発表するエッセイ『私の最後の羊が死んだ』が2024年10月31日に刊行されます。本書は、彼女のユニークな経歴や作家としての成長を描いた自伝的作品で、酪農業と羊飼いの生活がどのように彼女の文学に影響を与えたのかが詳細に語られています。
彼女の異業種体験
河﨑さんは、酪農家の娘として生まれ育ちました。大学卒業後、農業に関わるつもりはなかったものの、ある教授との出会いから始まった物語が彼女の運命を大きく変えることとなります。この出会い、つまりバーベキューでの美味しい羊肉が、羊飼いとしての道を開くきっかけとなりました。彼女はその後、ニュージーランドでの実習を通じて、羊を生産することに目覚めていきます。
実際に羊を育てたり出荷したりする中で、彼女は様々な人々との縁に恵まれ、徐々に羊飼いとして成功を収めていきました。特に、彼女のラム肉が高評価を得るようになった際、心の中に満ちる自信と誇りは、今にも語りかけてくるようです。
なぜ小説家へ?
しかし、成功を収めた羊飼い生活を終える決断を下した理由は何だったのでしょうか。本書ではその背景と、彼女がどのようにして小説家の道に進んでいくのかが語られます。「小説家前夜」とも言える時期の思いや葛藤が、彼女の筆から紡がれています。羊飼いとしての体験を通じて培ったものが、どのように彼女の小説に活かされているのか、ぜひ目を通していただきたいところです。
羊飼いの日常と日本の酪農事情
『私の最後の羊が死んだ』では、タイトルにもある羊飼いの日常が描かれているのはもちろん、日本の酪農経営事情や、羊にまつわる文化的な側面、さらには愉快なエピソードも豊富に盛り込まれています。中でも特筆すべきは、北海道のソウルフードであるジンギスカンに至るまで、羊を中心としたさまざまな話題が展開される点です。
河﨑さんのユーモアにあふれた筆致は、無理なく読者を引き込み、時にはクスッと笑わせる部分もあり、骨太な小説ファンにも楽しんでもらえる内容に仕上がっています。実際の羊飼いの生活や、その奥にある重要なメッセージを、楽しみながら学ぶことができるのも本作の魅力です。
著者について
河﨑秋子さんは、1979年に北海道別海町で生まれました。これまでにも数々の文学賞を受賞しており、特に2011年には「東陬遺事」で北海道新聞文学賞、2024年には『ともぐい』で直木賞を獲得するなど、今やその名は広く知れ渡っています。
本書は、彼女の初めてのノンフィクション作品であり、作家としての根幹を成す経験や感情を綴った貴重な一冊といえるでしょう。
書誌情報
- - 著者: 河﨑秋子
- - 定価: 1,650円(税込)
- - 発売日: 2024年10月31日
- - 判型: 四六判
- - 頁数: 226ページ
- - URL: 小学館
文筆家としての活動を通じて、羊飼いとしての経験をどう活かしているのか、ぜひこの作品を手に取って感じてみてください。