NECと明治大学の共同研究が明らかにしたシャッターアートの力
はじめに
最近、都市の風景を彩るシャッターアートが、ただの装飾にとどまらず、居住意向を高める効果があることがNECと明治大学の共同研究によって明らかになりました。世の中に数多くの落書きがある中で、アートが持つ魅力を活かすことで街の活力を引き出す可能性があることが示唆されています。この研究の成果は、2023年9月に開催された国際会議で発表され、11月8日には論文としても公開されました。
シャッターアートの価値
NECは長年にわたり、データを活用した空間の魅力向上や持続的価値の証明を目指してきました。特に、明治大学商学部の加藤拓巳准教授との合作では、マーケティング視点からシャッターアートが都市の魅力をいかに高めるかについて検証されています。
この研究では、「緑がある心地よい空間」や「環境に優しい素材」に関する科学的なアプローチが重要視され、アートが地域にもたらす付加価値の発見と市場理解の促進に貢献しています。
実験内容
本研究では、特にバイアスを最小限に抑えるため、ランダム化比較試験を用い、一般市民1500人にシャッターの異なるデザインを提示しました。具体的には、通常のシャッター、落書き、アートに分類した3つのグループに分けられ、それぞれの印象を評価してもらいました。
その結果、最も居住意向を示したのはアートが施されたシャッターで、43.4%の人々がこれに高い評価を付けました。対する落書きは35.4%、通常の状態は38.2%でした。このデータは、アートが住みやすさに影響を与えることを示しています。
研究の背景と意義
落書きは、公共の場において重要視されている問題の一つです。多くの自治体が巨額の予算を使い、落書きの清掃に取り組んでいますが、それに対してアートを取り入れることで、街全体の活力を高めることができるという逆転の発想が求められています。例えば、パリ市では年間約6億ユーロを落書き除去に投じている事実があります。
このような文脈の中で、本研究の意義は非常に大きいといえるでしょう。シャッターアートは、行政の負担軽減に寄与するだけでなく、地域の活性化にもつながる可能性があります。
結論と今後の展望
シャッターアートの導入がこれほどまでに居住意向に影響を及ぼすことが実証されることで、今後の街づくりや地域活性化において、アートが重要な役割を果たすことが期待されます。行政や地域の方々が広くこの研究の成果を理解し取り入れることで、すべての人が住みやすい、魅力的な環境が生まれる可能性があります。
この研究の成果は、今後の地域振興や日本の都市計画においても注目されるはずです。シャッターアートのさらなる普及に向けて、明治大学及びNECの取り組みが引き続き期待されます。