高齢者の「自分らしさ」を支えるコミュニケーションツール「ケアびー」
超高齢化社会が進む日本において、介護や認知症は誰もが直面する可能性のある課題です。高齢者が安心して自分らしく過ごせる社会を実現するため、東京都・品川区のHubbit株式会社は、高齢者向けのコミュニケーションツール「ケアびー」を開発しました。
同社の代表取締役である臼井貴紀氏は、自身の祖父の最期を経験したことから、高齢者の意思表示の重要性を感じ、ITを活用したコミュニケーションツールの開発に着手しました。
「祖父は寝たきりになり、意思表示が難しくなりました。祖母が代わりに意思決定をする状況に、私は違和感を感じたのです。祖父が指を動かしていたのを見て、しゃべれなくても別の方法で意思表示ができるはずだと確信しました。」
臼井氏は、ヤフー株式会社勤務時代に、エンディングに関わる課題をITで解決するプロジェクトを構想し、社内コンペに応募しましたが、惜しくも落選。その後、友人と合同会社を設立するも、会社を辞める決意ができず数年で解散しました。しかし、転職先での経験と、ある経営者からの後押しを受け、2019年にHubbit株式会社を設立しました。
当初は葬儀や相続、遺書などのIT化も視野に入れていましたが、高齢者のスマホ操作の難しさに直面し、まずは高齢者がITを使えるようにするための「デジタルデバイド解消」に焦点を当てることに。それが「ケアびー」開発の始まりでした。
操作不要!家族と簡単に繋がるケアびー
「ケアびー」は、介護が必要な高齢者や認知症の方でも、簡単に使えるコミュニケーションツールです。最大の特長は、ほぼ操作不要で、家族と顔を見ながら通話ができることです。
「高齢になると電話を取るのが難しくなりますが、ケアびーなら家族の顔を見ながら通話できます。カメラのオンオフは家族のスマートフォンから操作でき、字幕機能も搭載しているので、耳が聞こえにくい方や認知機能が低下した方でも安心して使えます。」
初期設定が完了した状態で届き、コンセントにつなげばすぐに利用できます。インターネットの準備も不要で、服薬確認や予定確認などのリマインド機能も好評とのこと。
「一度慣れてしまうと、認知症の症状が重い方でも定着します。最初は使いたがらなかった方が、後日、『ケアびーさんには前からお世話になっています』と喜んでくださったことも。家族から連絡が来るとわかると、皆さんすごく喜んでくれます。」
臼井氏は、ITが「情報を伝える」という役割を果たし、介護の課題を解決する可能性を確信しています。
東京立地のメリット:課題解決に最適な環境
Hubbit株式会社のオフィスは、山手線大崎駅から徒歩8分の「SHIP(品川区立品川産業支援交流施設)」にあります。
「SHIPは、利用料金が安く、個室オフィスは24時間利用可能です。時間制限なく仕事に集中できる快適な環境です。当社のサービスは地方需要が高く出張も多いので、品川駅に近い立地も大きなメリットです。」
臼井氏は、東京立地には多岐にわたる恩恵があると語ります。
「東京にはあらゆる分野の事業者が集まっているので、困ったことがあればすぐに解決できます。IT関係、タブレット開発、通信キャリアなど、多くの企業が都心部に本社を構えているため、直接会って話を聞くことも容易です。知人を通じて紹介を受ける機会も多いですし、イベントや勉強会も豊富なので、そこで課題を解決することも可能です。さらに、ベンチャーキャピタルも東京に集中しているため、資金調達の面でも有利です。」
未来へ向けて:全国展開と新たな介護サービス
今後の展望について、臼井氏は「ケアびーを全国展開し、後期高齢者のインフラにしたい」と意気込みを語ります。
「その先には、介護が必要になっても自宅で最期まで過ごせる、介護施設と在宅介護の中間のような世界観を作りたいと考えています。介護保険の仕組みとケアびーを組み合わせれば、実現できるはずです。」
高齢者の自立と家族との絆を支える「ケアびー」。その未来は、高齢者が安心して暮らせる社会の実現へと繋がっていくことでしょう。