NITEが開発した海洋生分解性プラスチックの解析手法
近年、海洋環境におけるプラスチックごみに対する懸念は日に日に高まっています。特に生態系への影響が問題視されており、その中でも「海洋生分解性プラスチック」という新たな素材が注目されています。これは、自然界の微生物の力を借りて分解され、最終的には二酸化炭素や水といった物質に変わることを目指しています。
この度、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)が、海洋生分解性プラスチックが微生物によってどのように分解されるかを効率的に評価するための新たな解析手法を開発しました。この手法により、プラスチックの分解過程はより明確に理解され、海洋生分解性プラスチックのさらなる発展と普及が期待されます。
新手法の特徴
NITEが開発した新しい評価法は、微生物によるプラスチックの分解で発生する気体、すなわち二酸化炭素をガスクロマトグラフィーで測定します。そして、液相には残存する分解生成物を液体クロマトグラフィー質量分析法で分析します。この二頭立てのアプローチにより、同時に多くの試料を効率的に評価し、生分解の進行状況を詳細に解析できるようになりました。
研究の結果、同一の微生物種でも、酵素分解や細胞取り込み、代謝の過程には多様性があることが確認されました。また、プラスチック表面に形成される微生物群(俗に言うプラスティスフィア)においても、異なる種の微生物が協力し合いながら分解を行っていることが示唆されました。これにより、微生物間の相互作用に対する理解が深まり、プラスチックの海洋環境における分解メカニズムに関する知識が蓄積されていくことでしょう。
環境へのインパクト
この解析法の導入により、今後の海洋生分解性素材やその製品の開発は加速する見込みです。また、プラスチックごみの問題解決に向けた新しいアプローチとして、今まで以上に多様な生分解性プラスチックの開発が進むことが期待されています。特に注目されるのは、NITEのバイオテクノロジーセンター(NBRC)が行う微生物株の分譲です。これにより、研究者や企業がこれらの生物資源を活用し、性能の高い素材への転換がよりスムーズに行えるようになるでしょう。
研究の成果と今後の動向
現在、NITEは国内の4海域で大規模な微生物叢データを収集し、微生物株の取得を進めています。2025年11月には、研究結果をまとめた論文が発表される予定であり、さらなる技術の進展が期待されます。このような革新的な取り組みが、持続可能な未来の実現へと繋がることが期待されています。
海洋生分解性プラスチックは、私たちの環境を守る重要な一歩となります。今後、NITEの技術がどのように広がり、私たちの生活に変化をもたらすのか、注視していきたいですね。