次世代AIデータセンターを支える新しい技術
OKIグループのプリント配線板(PCB)事業を担うOKIサーキットテクノロジー(OTC)が、次世代のAIデータセンターを支えるための革新的な技術を開発しました。それは、1.6Tbpsクラスの高速伝送PCBにおいて、高精度なビア特性を実現する「高周波ビア高精度シミュレーション技術」です。この新しい技術は、高周波・高密度化によって複雑化する多層PCBのビア特性の制御を可能にし、顧客の開発と量産化の時間を大幅に短縮することを目指しています。
AIシステムとPCBの関係
最近の生成AIの急激な普及と発展は、AI半導体やAIサーバー、さらにはデータセンターの高速化・大容量化をもたらしています。これらの機器に使用されるPCBにおいては、その多層化と構造の複雑化が進んでおり、伝送損失や信号反射の低減が重大な課題となっています。特に、多層PCBの層間を電気的に接続するビアは、高速伝送において信号品質を左右する重要な要素です。したがって、ビアの特性インピーダンスを正確に制御することが求められています。
高周波ビア高精度シミュレーション技術が解決する課題
OTCでは、PCB開発において最後の信号品質を設計段階で検証するために、高精度なビアモデルが必要不可欠であると認識しています。しかし、基本周波数が50GHzを超える高周波帯域では、従来のモデリング手法では製造プロセスやばらつき、高周波領域の物性値を適切に表現することが難しいという課題がありました。そこでOTCは、複雑化する高周波ビアの特性を考慮した新技術を開発したのです。
具体的には、PCB製造の初期段階において、この新しいシミュレーション結果をもとにビアの構造や寸法、製造マージンを自社の製造ラインに合うように総合的に検証・最適化します。これにより、求められる信号品質を満たすための最適な条件を絞り込むことが可能になります。
OTCは、長年にわたり蓄積してきた評価データを利用し、仕上がり寸法や製造バラつき、材料の物性値を独自のデータベースとして構築しています。この情報を基に、高精度なビアモデリングが可能になり、実際の機器において高い信号特性を確保することが実現しました。
展示会での技術紹介
さらにOTCは、2025年11月20日から22日まで福岡で開催されるアジア唯一の半導体ウエハに関するカンファレンス「SWTest Asia 2025」に出展し、今回の新技術に関する詳細をご紹介します。多くの企業や研究機関から注目されるこのイベントで、OTCの技術革新について広く知ってもらうことを期待しています。
用語解説
- - ビア(VIA HOLE): 多層PCBの層間を電気的に接続するための穴。
- - インピーダンス: 電圧と電流の比率を示し、高周波信号における電流の流れにくさを示す指標。
この新技術によって、OKIサーキットテクノロジーは次世代AIデータセンターの需要に応えるだけでなく、高速伝送PCBの開発・量産において新たな時代を切り開いていくことでしょう。