Nyoboltと高砂工業の戦略的提携
2019年、英国ケンブリッジに設立されたNyoboltは、急速充電技術で大きな注目を浴びています。このたび、同社はIQキャピタルとLocal Globeの姉妹ファンドであるLatitudeが主導した3000万ドルの資金調達ラウンドを実施し、企業価値を一層高めることとなりました。その中で高砂工業も戦略的パートナーとしての立場を明確にし、サポートを強化しています。
Nyoboltが展開する高出力電力システムは、特に産業分野における脱炭素化とダウンタイム削減に寄与することが期待されています。また、Nyoboltの急速充電システムはAIを駆使した倉庫や大型車両に導入されており、1.5億ドル以上の契約を締結していることがその実力を示しています。
電力需要の高まりとその解決方法
現在、AI自動化、大型輸送、データセンターといった電力集約型の分野では、24時間体制で稼働しつつCO2排出量を抑える必要があります。実は、現時点で電動化されているのはわずか20%に過ぎず、データセンターでは1分間の停電によって平均9000ドルの損失を被る試算もあります。特に最新のGPUを搭載したAIデータセンターは、非常に膨大な電力を必要とし、地域への電力供給にも影響を及ぼす可能性があります。2030年までに電力需要は165%増加する見込みで、この課題を解決するための取り組みが急務となっているのです。
Nyoboltのエネルギー貯蔵技術と急速充電システムは、このギャップを埋めるだけでなく、新たなスタンダードを気づくことを目指しています。従来の技術に比べ最大20倍の電力供給能力を持ち、数分で充電を完了させることができるため、大量電力を消費するアプリケーションでもダウンタイムをゼロにすることが可能です。また、従来のリチウムバッテリーと比較して、天然資源の使用を大幅に削減する点も大きな特長です。
独自の技術がもたらす未来
Nyoboltの革新は独自の負極材料によって支えられています。これにより、従来バッテリーの劣化問題を解消しながら、高電力密度と急速充電が実現されています。この技術を持つ高砂工業は、Nyoboltの負極材料製造において極めて重要なパートナーです。両社は長期的な関係を築いており、2024年には英国、2025年からは日本で負極材料のパイロット生産をスタートさせる予定です。
Nyoboltはすでに1.5億ドルの契約を獲得し、2024年度には900万ドルの収益を見込んでいます。特に注目すべきは、NyoboltがEVバッテリーを5分で80%以上充電できる技術を持つ初の企業として認められたことです。これにより、世界のエネルギー問題に対しても大きく貢献すると期待されています。
企業の展望
Nyoboltの共同設立者兼CEO、サイ・シバレディ氏は、今回の資金調達が同社の生産能力を大きく飛躍させると述べています。高砂工業の鈴木達也社長も、両社の技術が結びつくことで社会課題を解決する力が高まると期待を寄せています。
今後、Nyoboltの急速充電システムはさらに進化し、5年以内に5000億ドル規模に成長すると言われるデータセンター産業の電力問題を解決する可能性を秘めています。これからの展開から目が離せません。