新たなバルブ開発の背景
旭有機材株式会社(東京・台東区)は、PFAS(ペルフルオロアルキル化合物)代替品を使用したバルブの実用化に向けて、栗田工業株式会社(東京・中野区)と共同で実証実験を行うことを発表しました。2025年の春からこの実験が始まる予定です。この取り組みは、欧米でのPFASに対する規制強化に対応するものです。
旭有機材が抱える課題
旭有機材は樹脂製バルブを製造しており、これまでも製鉄、化学、半導体など多様な分野で採用されてきました。樹脂製バルブの特長である軽量性、耐錆性、長寿命は、PFASを原料とする部品に依存しています。PFASは分解が難しく、健康や環境への影響が問題視されてきました。そのため、特に欧米ではPFASの使用に対する規制が進んでおり、旭有機材はこの社会的変化に適応する必要に迫られていました。
今回の実証実験は、超純水製造ラインに用いるバルブに焦点を当てており、栗田工業との連携によって新たな素材の開発が進められています。社内の試験により一定の耐久性が確認されたため、実用化に向けての第一歩を踏み出すことになりました。
PFASとは何か
PFASとは、有機フッ素化合物であり、その中にはペルフルオロアルキル化合物やポリフルオロアルキル化合物が含まれています。これらは1万種以上の化学物質を指し、水を弾く性質や耐熱性、耐薬品性を持つため、様々な産業で利用されてきました。しかし、自然界で分解されにくいことや、一部のPFASが健康に悪影響を及ぼす可能性が指摘されていることから、特に欧米でこれらの規制が強まっています。
PFAS規制の重要性
特にPFOA(ペルフルオロオクタン酸)やPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)は、発がん性や内分泌かく乱作用が懸念されており、ストックホルム条約においても規制対象となっています。日本でも化学物質の審査規制が進められ、これらの物質に対する製造や輸入が禁止されています。
未来への期待
現在、旭有機材が使用しているPFASであるフッ素系高分子ポリマー(PVDF、PTFE、FKMなど)は現行の規制対象ではありませんが、今後、欧米において包括的な規制が導入される可能性があります。これにより、バルブメーカーだけでなく、化学プラントや関連産業にも影響が出るかもしれません。そのため、旭有機材はPFASの代替素材を用いた樹脂製バルブの実用化を進めているのです。
2025年春から開始される実証実験は、PFASの代替素材を用いたダイヤフラムバルブに関連しており、さらに配管部材の共同開発も進めていくとのことです。「はじめて」に挑み「違い」をつくるという企業理念のもと、今後も社会問題の解決に寄与し、持続可能な社会の実現を目指していく考えです。