熊本県人吉球磨の産業振興に向けて
大日本印刷株式会社(DNP)が肥後銀行系のシンクタンクである公益財団法人地方経済総合研究所と手を組み、熊本県人吉球磨地域の産業振興事業に取り組んでいます。このプロジェクトは、観光庁の推進する「サステナブルな観光コンテンツの高度化モデル事業」や全国商工会連合会の「共同・協業販路開拓支援補助金」にも参加し、地域の主要産業である観光業の発展と、特に製造業の代表である球磨焼酎のスイスでの販路拡大を支援しています。
緑の流域治水スタディツアー
2020年7月に発生した豪雨によって大きな被害を受けた球磨川流域では、地域共創を目的とした「緑の流域治水」のプロジェクトが進められています。この取り組みでは、河川や遊水池の整備などハード面に加え、流出抑制や氾濫流のコントロールなどソフト面からもアプローチしています。
DNPは「緑の流域治水スタディツアー」を提供し、参加者にこの新しい治水の考え方を学ぶ機会を提供しています。ツアー前にはeラーニングシステム「LearningCast」を通じて事前学習を行い、双方の相乗効果を図っています。360度のVR映像を活用した学習コンテンツまで用意され、参加者の理解度を深め、満足度を高める工夫をしています。
球磨焼酎の海外販路拡大
人吉球磨地域は米焼酎の名産地で、約500年の歴史を有する球磨焼酎が重要な文化的かつ経済的資源です。国内市場が縮小する中でも、球磨焼酎は国の輸出重点品目として注目されています。2025年には40億円の輸出額目標が掲げられ、新たな市場を求めて多くの製造会社が海外展開を志していますが、人口減少や豪雨災害後の再建といった課題を抱えています。
そのため、地方経済総合研究所はフランスにおける販路拡大のプロジェクトを立ち上げ、DNPも2023年度から参加しています。2024年度にはスイス市場への本格参入を目指し、現地のインポーターや製造元との連携を進めています。
ジュネーブで行ったイベントでは、多くの試飲者が球磨焼酎を「とてもおいしい」と評価し、成功を収めています。今後もジュネーブでの認知度を高め、他の都市でも展開を図る計画があります。これにより、球磨焼酎を世界的なブランドに育てることを目指します。
今後の展望
DNPは2025年度以降も地方経済総合研究所との連携を続け、観光産業におけるインバウンド需要の取り込みや球磨焼酎の国際的展開を進める意向です。その結果、地域の伝統産業を再活性化するモデルを築くことを目指しています。DNPは、地元の関係者との対話を深めつつ、社会問題の解決に向けた取り組みを続け、持続可能な成長に貢献していく予定です。【本記事の情報は発表日現在のものです。】