日本酒から生まれた新素材、グラファイトの将来性
新潟県津南町にある津南醸造株式会社は、地域資源の循環型活用を目指して新たな試みを行っています。日本酒製造過程で生じる副産物である酒粕を利用し、岡山理科大学と共同で「酒粕由来グラファイト」の試作を実施しました。この取り組みを通じて、今後のサステナブルな技術開発が期待されています。
背景と目的
津南醸造は、日本酒アップサイクルプロジェクトを立ち上げ、酒粕などの副産物の有効利用を促進しています。このプロジェクトの一環として、微生物由来の酒粕を原料に高付加価値な炭素材料への変換が検討されています。岡山理科大学との共同研究では、酒粕に含まれた成分が、新しい材料の特性や導電性にどのように寄与するかを明らかにすることが目指されています。
試作の実施
現在行われている試験では、酒粕を電気炉で炭化させた後、その炭化物を従来型のSPS(Spark Plasma Sintering)装置で焼結しました。この結果、一定の硬さを持つグラファイト材料が得られ、その導電性も確認されました。今後は、これを基にさらなる研究が進められるため、その成果が期待されています。
今後の展望
岡山理科大学が開発する次世代SPS装置により、より高温・超高圧環境下での試験も行われる予定です。これに伴い、酒粕由来のカーボンナノチューブやグラフェン、さらにはダイヤモンド半導体などの高機能材の開発も視野に入れています。これにより、酒造りの副産物が新たな価値を生むことが可能になります。
津南醸造の役割
津南醸造は、チームワークを重視し、地域の公的機関や企業との連携を深めています。日本の一次産業を支えるという意義を持ちながら、革新的な活用法を模索し続けます。具体的には、酒粕を用いた導電性素材の開発や、食品用途への展開など、多岐にわたる方向性を探求しています。
日本酒アップサイクルプロジェクト
このプロジェクトでは、酒粕から半導体材料や導電性素材の開発が進められ、食品用途にとどまらない可能性が拡がっています。日本酒の文化を生かしつつ、食や美容、環境、バイオといったさまざまな分野でも新たな価値を創出していくことが目指されています。
会社概要
津南醸造株式会社は、新潟県中魚沼郡に本社を構える酒蔵です。豪雪地帯に位置し、標高2,000m級の山々から供給される天然水を使用し、特に品質にこだわっています。「Brew for Future〜共生する未来を醸造する〜」をコンセプトに掲げ、新しい日本酒のスタイルを確立してきました。
2025年には、新潟県知事賞に輝く技術力も証明されており、地域への貢献とサステナブルな未来を担う企業としての姿勢を示しています。津南醸造の取り組みは、これからの日本の一次産業の在り方を考える上で、非常に興味深い事例となるでしょう。