運慶の祈りを写し取った六田知弘の新写真集、仏教美術の深淵に迫る

運慶の祈りを映し出す新たな写真集

2023年10月3日、新たに登場した六田知弘の写真集『運慶六田知弘写真集』は、仏教美術の世界を深く掘り下げ、運慶の求めた祈りの姿を見事に描き出しています。本書には、運慶自身やその工房で制作されたであろう作品が、父康慶、息子康弁の作品と共に97点収められています。これにより、親子三代の異なる感性や共鳴を感じ取ることができ、運慶が築いた仏教美術の力と魅力を存分に楽しめます。

六田知弘が捉える運慶の世界

本書の写真は、長年にわたり国内外で数多くの仏教美術を撮影してきた六田知弘によるものです。彼の手がける作品群は、モノクロームの3色印刷を主に利用し、その合間に色刷りが挟まれています。このスタイルにより、運慶仏が持つ深い精神性やその造形の美しさが余すところなく浮かび上がります。

特に、表紙や内ページに掲載された部分拡大写真は、仏像の表情や動きの緊張感を生々しく伝えます。それらの写真は、運慶の作品に込められた濃厚なエネルギーを一目で感じることができ、一体の像の存在感を強く印象づけています。

スタイリッシュなデザインと印刷

本書のデザインは、六田知弘と共に数多くの写真集を手掛けてきた人気デザイナー、シルシの上田英司氏によるものです。運慶の仏像作品の重厚感を引き立てつつ、柔らかいタッチの並製本でまとめられたこの写真集は、装幀にも工夫が施されています。仏像ではなく足を選ぶ斬新なデザインは、多くの人々を惹きつけることでしょう。

また、印刷は東京印書館が行い、プリンティングディレクターの高栁昇氏が細心の配慮をもって印刷設計を行っています。この仕上げにより、モノクロトリプルトーンによる美しい墨色の表現が、まさに圧巻です。

商品情報と展覧会の案内

『運慶六田知弘写真集』は、定価5,940円（税込）で求龍堂より発売されています。160ページにわたり、運慶の美術と深い精神性を堪能できる内容となっています。また、展覧会「運慶と快慶六田知弘・佐々木香輔写真展」が相田みつを美術館で開催されており、2023年10月3日から11月26日までの期間中、多くの人々に運慶の世界を直に体感する機会が提供されています。

著者について

六田知弘は1956年に奈良県で生まれ、大学卒業後、ネパールのシェルパたちの村での生活を通じて多くの作品を撮影してきました。彼は自然や人々との根源的なつながりをテーマに、石や水、文化財などに焦点を当て、数多くの写真集を刊行しています。また、震災後には被災地の記録として5000点を撮影し、展覧会を行っています。その作品は、ただの写真に留まらず、見る者に深い感動を与えることでしょう。

六田知弘の最新写真集は、仏教美術を新たな視点で捉え直す大きな一歩となります。運慶の祈りを感じ、彼が求めた深い精神性を探索する旅に、ぜひこの写真集を手に取っていただきたいです。