幼児の運動能力測定を簡素化する「SMC-Kids」開発
名城大学と琉球大学の研究チームは、幼児の運動能力を簡単かつ効率的に評価するための新しいツール「Simple Motor Competence-check for Kids(略称:SMC-Kids)」を開発しました。このツールは、特別な用具や広いスペースを必要とせず、日常的に利用できるものとなっています。
幼児の運動能力の重要性
幼児期の運動能力は、健康だけでなく認知能力や学習への影響が大きいため、定期的な評価が求められます。しかし、既存の評価ツールは専門的な知識や技術を要し、保育現場での導入が難しいという難点がありました。そこで、SMC-Kidsの開発がスタートしました。
SMC-Kidsの特徴と仕組み
SMC-Kidsは、3~6歳の幼児を対象にした測定ツールで、「10m折り返し走」と「紙ボール投げ」の2項目から成り立っています。必要なものは、A4用紙、布ガムテープ、巻尺、ストップウォッチだけ。手軽にできるこのシステムは、20人のクラスであれば約20分で測定が完了します。
特に、SMC-Kidsはバドミントンコートほどのスペースがあれば使用可能で、運動発達をしっかりと評価できるのが特徴です。家庭や地域イベントでも利用できる点が魅力的です。
妥当性と信頼性
SMC-Kidsは、既存の運動能力評価ツールである「Test of Gross Motor Development-3(TGMD-3)」と比較して、移動能力と操作能力において高い相関が認められました。信頼性についても、評価者間や評価者内での再現性が確認され、非常に高い結果が示されています。これにより、SMC-Kidsが幼児の運動能力を的確に評価するための信頼できるツールであることが分かりました。
今後の展望
開発にあたり収集した約2,000人分のデータをもとに、幼児の運動能力評価基準の策定を進めています。また、忙しい保育現場でも運動能力の評価や管理を簡便に行えるよう、Excelを活用したシステムの構築にも取り組んでいます。これにより、保育現場や家庭での情報共有が可能になり、幼児の健康で活動的な成長を促す手助けができることを目指しています。
研究の背景
幼児の運動能力は、運動、認知、社会性などの幅広い発達に関連しています。従来の評価ツールの難しさを克服し、手軽で実用的な評価方法が求められていました。しかし、国や地域の違いによって運動能力の評価基準が異なるため、統一的な基準の策定も課題として残っています。
今後は、SMC-Kidsが全国各地の保育園でも利用され、幼児の運動発達がより良い形で支援されることを願っています。