新橋芸者・お鯉の魂の物語 "紫の鯉"
新たに出版される奥山景布子氏の『紫の鯉』は、新橋の名妓・お鯉の波乱に満ちた人生を描いた傑作長篇小説です。この作品は、時代の激動を背景にしたお鯉の人物像を深く掘り下げ、彼女の苦悩と喜びを鮮明に浮かび上がらせています。彼女は梨園、花柳界、そして角界で名をはせ、さらには当時の首相の愛人として歴史に名を刻みました。
お鯉の生涯に迫る
お鯉は東京で最も名高い芸者として名を馳せ、多くの著名人や政治家に愛されました。その人生は、まさに激動の時代の幕間であり、日露戦争の最中も彼女の存在が重要視されていきました。特に注目すべきは、彼女が山縣有朋の手引きにより首相・桂太郎の妾となり、その生活が如何に影響を及ぼすかという点です。
しかし、愛されながらも世間の偏見に耐え、彼女の存在は常に疑問視されるものでした。本書では、そんなお鯉の複雑な感情や葛藤を巧みに描写し、彼女の人間性に光を当てています。
彩り豊かな歴史背景
本作では、お鯉の物語が展開される明治、大正、昭和という時代背景も重要な要素です。特に彼女の子供たちに関するエピソードや、日比谷焼討事件を通して彼女が直面する社会的な試練は、読者を引き込む要素となっています。
奥山景布子氏の思い
著者の奥山氏は、彼女自身が抱く「女性の言葉を掘り起こしたい」という思いを前面に押し出しています。
「私は首相の愛人でした」という言葉を出発点に、明治から昭和まで生きた女性たちの本音に迫ることが、この物語の大きなテーマです。
書誌情報
本書は368ページから成り、価格は2,090円(税込)で、10月31日(金)に発売されます。装画には、鳥居言人氏の作品が使われており、作品の魅力をさらに引き立てています。
この作品を通じて、歴史の中で揺れ動いた女性の姿がどのように描かれているのか、ぜひ皆さんにも体験していただきたいです。