新刊「アリストテレス ニコマコス倫理学」解説
NHKの人気番組「100分de名著」が新たな書籍を発表しました。このシリーズは、毎回古今東西の名著を分かりやすく解説するもので、最新刊のテーマは「幸福とは何か」です。東京大学の山本芳久教授が手掛け、古代ギリシャの思想家アリストテレスの著作「ニコマコス倫理学」を深く掘り下げます。
アリストテレスは、さまざまな分野での基盤を築いた「万学の祖」として知られていますが、彼が初めて「倫理学」を体系化したのがこの作品です。倫理学という言葉は、ギリシャ語で「人柄に関わる事柄」を意味します。つまり、アリストテレスは単に義務やルールを学ぶのではなく、真に幸福で充実した人生を送るためにはどのような人柄を形成するべきかを考えました。
彼によれば、幸福は人間の固有の能力を発揮することにあります。そのためには、内的な力として「徳(アレテー)」を養うことが必要だと述べています。この徳は、一定の行動を繰り返し習慣化することで「性格」となり、育むことが可能です。
また、アリストテレスは人間同士の絆である「友愛(フィリア)」についても重要視しました。彼はこの友愛を分類・分析し、どのような形の友情が真の幸福に寄与するのかを考察しました。彼の倫理的探求は、今日においても多くの現代人に影響を与えており、「正義」や「欲望」、さらには「生き方」や「友情」といったテーマは、私たちの生活と深く結びついています。
この新刊は、アリストテレスの考えを現代に照らし合わせ、読者がその内容を自身の人生にどう活かすかを考える助けとなる「実践の書」と位置づけられています。特に特別章では、アリストテレスの思想を受け継いだトマス・アクィナスに焦点をあて、ギリシャ哲学とキリスト教がいかに融合したかを示しています。
本書は、複数の章から構成されており、それぞれが倫理学や幸福、徳、そして友愛について深入りしています。以下はその大まかな内容です:
1.
「いかによく生きるか」を考える学問
冒頭では、倫理学の必要性についてぶつける質問が投げかけられます。
2.
倫理学とは何か
アリストテレスが定義した倫理学の概念が探求されます。
3.
幸福とは何か
幸福の本質についての考察です。
4.
「徳と悪徳」
どのように徳を身につけ、悪徳を避けるかが議論されます。
5.
友愛とは何か
友情の多様性とその重要性についての考察です。
6.
特別章: アリストテレスとトマス・アクィナス
哲学の流れを意義深くつなげる章。
著者の山本芳久教授は、神奈川県で生まれ、東京大学大学院で哲学と倫理学を専門に学び、長年にわたりこの分野で多くの著作を発表しています。彼の豊かな知識と深い理解が、本書において存分に生かされています。
この新刊は、私たちがどう生き、幸福を追求するかを再認識させてくれる一冊です。興味がある方はぜひ手に取ってみてください。発売日は2024年8月26日、定価は1,210円(税込)です。