株式会社ispaceとTASAの新たな月面ミッション契約について
株式会社ispace(東京・中央区)は、台湾国家宇宙センター(TASA)による公募で科学ミッション機器の月面輸送サービスに採択されたと発表しました。この契約により、ispaceは2028年に予定されているミッション4で、TASAの「ベクトル磁力計および紫外線望遠鏡」を月へ輸送することになります。契約総額は約800万ドル(約11.7億円)とされています。
台湾宇宙センターの役割と背景
TASAは2023年に正式に宇宙機関として再編され、台湾国内の宇宙技術の研究開発や宇宙関連政策の推進に注力しています。ispaceは、TASAとの間で戦略的対話を進め、台湾の中長期的な月計画の構築について協議を行ってきました。このような連携は、台湾と日本の宇宙技術の進化に寄与することが期待されています。
特に、ispaceは2024年12月にTASAとの間で月面探査に関する覚書を締結したことから、台湾との関係を一層強化していることが分かります。また、2023年1月に実施されたミッション2では、台湾中央大学が提供した深宇宙放射線プローブ(DSRP)を搭載し、月に向かう航行中の放射線環境を観測、貴重なデータを収集するなど、台湾の産学官との連携を推進しています。
ispaceの今後の展開
ispaceは、経済産業省のSBIR補助金を活用しているシリーズ3ランダー(仮称)の開発を進めています。このプロジェクトは宇宙戦略基金のテーマの一つで、月面の水資源探査技術の開発と実証が目的です。今回の新たな契約により、TASAの「ベクトル磁力計と紫外線望遠鏡」がミッション4の重要なペイロードとなる予定です。
ispaceの代表取締役CEO、袴田武史氏は、「このたび、ispaceがTASAとの科学ミッション機器の月面輸送に採択されたことを心より光栄に思います。台湾はテクノロジーの集積地であり、中長期的に日本と連携してアジアを代表する宇宙探査を推進していくことが期待されます」とコメントしています。
企業概要と未来へのビジョン
株式会社ispaceは、「人類の生活圏を宇宙に広げ、持続可能な世界へ」というビジョンのもと、月面資源開発に取り組む宇宙スタートアップ企業です。2010年に設立され、月への低コストかつ高頻度の輸送サービスを目指して小型ランダーや月面探査用ローバーを開発しています。ispaceは、民間企業が月でビジネスを行うための基盤を提供し、月市場への参入を目指しているのです。
2022年には、SpaceXのFalcon 9を用いて初のミッション1を成功させ、続くミッション2も2025年に無事打ち上げられました。これらのミッションは、R&Dとしてランダーの技術検証を行い、月面輸送サービスの事業モデル強化に寄与しています。次なるステージとして、2027年にはUSDによるミッション3の打上げが計画されており、得られたデータを基にさらに精度の高いサービスを提供する見込みです。
台湾との連携を深めつつ、ispaceは今後も革新的な月面輸送サービスを展開し、更なる宇宙探査の進展に寄与していくことでしょう。