画期的な光通信技術で大容量伝送を実現
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は、基準光配信技術と光コムを融合させることで、商用光通信装置200台分に相当する毎秒336テラビットの大容量光通信を達成しました。この革新的な技術は、従来必要とされていた200個の光源をわずか一つの光源で実現するもので、通信業界に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。
技術的背景
従来の光通信システムでは、様々な波長帯域を用いてデータを大量に伝送する波長多重技術が展開されています。しかし、個別の光源モジュールを数多く準備する必要があり、導入コストが高くなるという課題が存在しました。NICTの研究者たちは、この問題を解決すべく、高品質の光コムを生成し、250GHzの周波数規格に準拠したコヒーレント光通信システムを構築しました。
具体的には、S、C、L波長帯の全域を網羅する高品質光コムを用いて、650波長の通信チャネルを作成し、波長間の周波数同期を自動化しました。これにより、個別の光源を制御する必要がなく、効率的なデータ伝送が実現できました。
実験結果と評価
この新しい光通信システムは、最新の商用光通信装置200台分に相当する毎秒336テラビットの伝送容量を持ち、偏波多重方式とモード多重を利用して高次の信号変調を行うことで、大容量通信を可能にしました。特に、商用化可能な光源がS帯においても利用できる道筋が開けたことは、光通信システムのさらなる広帯域化とコスト削減に貢献することが期待されています。
研究成果は、国際的な評価を受け、米国サンディエゴで開催された第47回光ファイバ通信国際会議(OFC 2024)にて最優秀ホットトピック論文として採択され、その革新性が世界中の専門家から称賛されました。
将来の展望
今後、この技術が商用化されることで、S帯の通信用光源を一つに集約することができ、数百台の光源が不要となります。また、39コアファイバを活用することで、実験結果から得られた336テラビットの伝送容量は、理論上最大で毎秒12ペタビットに達する見込みです。これにより、光通信システムの大幅なコスト削減が期待されると同時に、より効率的なデータ通信が可能となるでしょう。
このように、NICTによる基準光配信と光コムの融合技術は、将来的な光通信の形を大きく変えるキーとなる要素であり、次世代の通信インフラを支える重要な技術として注目されています。