芥川賞候補作に選ばれた八木詠美の新作『アンチ・グッドモーニング』
2026年の春に、『アンチ・グッドモーニング』というタイトルの新作が八木詠美によって発表され、話題となっています。この作品は第175回の芥川龍之介賞に候補作として選ばれ、文学界での注目が集まっています。八木はこれまでのデビュー作『空芯手帳』で国際的に評価されており、その期待を受けて新作がどのような内容になるのか、多くの読者が待ち望んでいます。
本作の概要
『アンチ・グッドモーニング』は、主人公・野上という女性会社員の視点から語られる物語です。彼女は8か月という長い間、不眠に悩まされており、「眠れるなら死んでもいい」という過激な言葉が口をついて出るほどに精神的に追い込まれています。
物語の舞台となる会社は、社員の健康を気遣い、ウェルビーイングを追求する環境です。その一環として、社内では厳格なルールが設けられています。例えば、チャットでのレスポンスは即座に行うこと、社内のスタンプは常にポジティブなものを選ぶこと、そして解決策を重視するあまり批判は避けることが要求されます。
しかし、心の平穏を求める彼女の思いとは裏腹に、職場の規則や周囲の期待は逆に彼女を苦しめる要因となっています。特に、自宅で優しい夫が「一緒に不眠を治そう」と心を配り、完璧な食事を提案したり、癒しのためのレンタルニワトリを持ち込んだりするものの、改善は見られないという状況です。
このような状況の中で、野上は会社のeラーニング動画で出会った講師・出冬覚から衝撃的な提案を受けます。「魂を少しいただければ、あなたを眠れるようにして差し上げましょう」という契約が持ちかけられるのです。この一文から始まる不眠との格闘は、彼女がどのように自分の苦悩を乗り越えるのかという過程を描いています。
社会的背景とテーマ
本作品は、現代社会における「ポジティブ至上主義」に対する鋭い critique を行っています。八木は、誰もがウェルビーイングを享受することが推奨される土壌の中で、逆に自分を見失う女性の姿を鮮やかに描写しています。彼女の物語は、仕事と生活のバランスを模索する現代の会社員にとって共感を呼ぶテーマが詰まっており、それが評価される所以ともなっています。
著者について
八木詠美は1988年に長野県に生まれ、2020年にデビュー作『空芯手帳』で第36回太宰治賞を受賞しました。この作品は多くの国に翻訳され、特に英訳版がニューヨーク・タイムズで取り上げられるなど、国際的なファンを獲得しました。その後、24年には『休館日の彼女たち』で河合隼雄物語賞を受賞し、確固たる地位を築いています。
書誌情報
- - 書名: アンチ・グッドモーニング
- - 著者: 八木詠美
- - 仕様: 46判/上製/184ページ
- - 発売日: 2026年6月29日
- - 定価: 1,870円(本体1,700円)
- - ISBN: 978-4-309-03275-7
- - 装丁: 川名潤
この新作『アンチ・グッドモーニング』は、現代を生きる会社員のリアルな苦悩を描いた作品として、八木詠美の新たな傑作として期待されています。ぜひ、書店で手に取ってみてください。