ボウイの魂が宿るミュージカル『LAZARUS』
2025年5月31日から6月14日、横浜・KAAT神奈川芸術劇場で、デヴィッド・ボウイの遺作となるミュージカル『LAZARUS』が待望の日本初演を迎えます。この作品はボウイの存命中に誕生したもので、彼の多彩な音楽的遺産が生かされた壮大な物語となっています。
ボウイとエンダ・ウォルシュのコラボ
『LAZARUS』は、ボウイと劇作家エンダ・ウォルシュが共同で創作した作品で、ボウイが得意とする非現実的なテーマが魅力です。本作は、ボウイが主演した1976年のSF映画『地球に落ちてきた男』の続編として捉えられています。主人公のニュートンが異星から地球に落ち、新しい人生を模索する姿を描きます。
歌の魅力
劇中では、ボウイの代表曲『All the Young Dudes』『Changes』『Heroes』がふんだんに使用されています。また、本作のために特別に書き下ろされた新曲『No Plan』『Killing a Little Time』『When I Met You』も見どころです。ボウイが自らの言葉を通じて表現したいテーマが、音楽に色濃く反映されています。稽古場では、主演の松岡充が『Absolute Beginners』を歌い上げる姿が印象的でした。歌いながら、彼の熱意が伝わってきました。
稽古場の様子
稽古は熱心に行われ、演出の白井晃氏が台本を手にして、キャストに「自分のキャラクターをどう見せるかが重要」と語りかける場面も。ネガティブな感情を表現する瞬間や、歌の合間に見られるキャスト同士の掛け合いは、演じられるキャラクターの背景や感情の深層を引き出していました。
話の中でのエリー(鈴木瑛美子)とニュートン(松岡)の複雑な関係が、音楽そのものによって浮かび上がる瞬間がいくつもありました。特に、エリーがニュートンに向ける誘惑の姿は、ボウイのミュージックビデオに登場したタバコの化身・ゼブラを彷彿とさせます。このように、観客は音楽と演技の両方から感情的な旅に誘われることでしょう。
ボウイのメッセージ
白井氏は、「ボウイが自身のがんと向き合いながら制作したこの作品は、彼の遺言とも言えるもの。観客が自らの経験と重ねて観られるように、と願っています」と語りました。この言葉からも、彼が如何にボウイの意図を受け継ぎ、現代に生かそうと試みているかが伝わってきます。
本作の中でボウイが描写した主人公の苦悩は、視覚的に運ばれる演出とともに、観客に強く響くでしょう。そして物語のクライマックスでは、ニュートンが天に手を伸ばすシーンでボウイの魂が降りてくるような感覚を味わえることと思います。
公演情報
ミュージカル『LAZARUS』は、2025年5月31日から6月14日まで横浜で、6月28日と29日には大阪でも上演されます。チケットは好評発売中で、公式サイトでは新たな情報が公開されていますので、ぜひチェックしてみてください。
デヴィッド・ボウイの芸術的なメッセージやテーマが、どのように舞台に生きるのか。興奮と期待に満ちたこの作品を、どうぞお見逃しなく。