ハラスメント意識の高まりと職場環境の変化
近年、ハラスメントに対する意識が高まりを見せていますが、果たして職場環境は改善されているのでしょうか。一般財団法人日本ハラスメントカウンセラー協会が実施した調査によると、この問題は多くの管理職や中間管理職にとって懸念材料となっていることが明らかになりました。
調査概要
調査は2024年5月2日から5月7日まで行われ、対象は20代から60代までの正規社員1,049人です。具体的には、役員や部長などの管理職が含まれる他、さまざまな年代にわたる結果が得られました。調査方法はPRIZMAというインターネット調査を用い、企業規模も1,000人以下から1,000人以上に分かれて調査されています。
ハラスメント意識の変化
調査結果によれば、管理職層の中には「働きにくくなった」「職場が暗くなった」と感じる人が多いという結果が出ました。特に中間管理職では、ハラスメント意識の高まりが逆に職場環境を厳しくしているとの声が上がっています。この変化に対するネガティブな感情は、実際の業務に影響を及ぼしていると考えられます。
ハラスメント経験の実態
さらに、調査では約半数の回答者がハラスメントを受けた経験があると答え、その内訳を詳しく見ると、パワハラが38.3%、セクハラが10.9%、カスハラが8.5%、そしてマタハラが4.8%という結果が出ました。これに対し、ハラスメントを受けて何も対策をしなかったという人は33.6%にのぼり、相談窓口を利用した人は僅か12.3%と、少なさが際立ちます。
実際のハラスメントの例
調査の中では、具体的なケースについても尋ねられました。パワハラの例としては、感情的な叱責や時間外労働の強要が報告されています。セクハラについては、身体的接触や性的な発言が挙げられ、カスハラでは顧客からの理不尽なクレームが多いようです。
ハラスメント防止研修の実施状況
ハラスメント防止研修の実施に関しても調査が行われました。その結果、実施されていないと答えた企業が33.5%にのぼり、年に1回以上実施されている企業は全体の32.4%にとどまりました。このことから、多くの企業が教育や研修に対してまだ十分な対策を行えていないといえます。
社内の相談窓口の機能
ハラスメント相談窓口が実際に機能しているかという点については、30.7%の人が「有効に機能している」と回答しましたが、「機能していない」と感じている人も少なくなく、特に設置されていない企業も存在します。最近の法改正によって相談窓口の設置が義務化されていますが、その実効性には疑問の声が残ります。
まとめ
調査を通じて、ハラスメント意識の高まりがもたらした影響について、管理職と一般社員の間にギャップが存在することが明らかになりました。管理職層は特に変化に敏感であり、ポジティブな反応が見られる一方で、多くはネガティブな感情に影響されていることも浮き彫りになりました。今後の課題は、ハラスメント研修や相談窓口の改善策を講じることで、職場環境の向上を図ることです。これにより、ハラスメントを受ける側の心理的負担を軽減し、働きやすい環境を整えることが求められています。