戦時中の教科書『復刻版 初等科国語 高学年版』の意義
近年、戦時中に使用された国語教科書『復刻版 初等科国語 高学年版』が好評を博し、3刷を迎えることとなりました。この教科書は、かつて小学校5年生や6年生が学んでいたもので、今の教育とは異なる「系統学習」を取り入れていたことが特徴です。戦前の教育システムでは、子どもたちに「なぜそうなるのか」を考えさせることが重視されており、それが道徳心や思考力を育む重要な要素とされていました。
戦後の教育は、GHQによって「問題解決型学習」にシフトしました。このアプローチは、明確な答えを求める形式であり、創造的な思考力を育む上では限界があると言われてきました。この変化は日本人の思考様式に影響を与え、本書が復刻される背景にある問題でもあります。
道徳心と愛の心の涵養
本書の根底にあるのは、道徳的精神と愛の心を育てることです。「系統学習」の前提は、この二つの価値観であり、国語教育が単なる思考の道具ではなく、国民の精神を表現するものであるとしています。この教科書は、軍国主義を助長するものではなく、愛による道徳的精神の育成を重視している点が評価されるべきです。
国語教育で育むべきは、思考力、判断力、表現力です。しかし、これらは前提となる価値観がなければ意味を成しません。道徳的な価値観の欠如は、思考や判断、表現に歪みを生じさせるからです。したがって、道徳心が備わった教育の意義はますます重要になっています。
復刻版の学びの意義
復刻された『初等科国語』を学ぶことは、単に当時の教科書を通して道徳心を学ぶことに留まりません。それは、日本人としてのアイデンティティを再確認し、道徳心を大切にする社会の中で自らを位置付けるためのプロセスでもあります。正しいか間違っているかという議論を超えて、日本の道徳的価値観に触れ、理解を深めることが求められています。
もし教育の本質が道徳心を育むことにあるなら、復刻版『初等科国語』を通じて、私たち自身の価値観を見直す機会ともなるでしょう。これまでの教育システムの変遷を踏まえ、道徳心の重要性を再認識し、未来を担う子どもたちにどのような教育を施すべきか、一緒に考えていくべきです。私たちが今、何を学び、何を重視するのか、それが未来につながるでしょう。
書籍情報
復刻版『初等科国語 高学年版』は文部省によって編纂され、384ページに渡って構成されています。
- - 著者: 文部省
- - 解説: 小名木 善行
- - 発行: ハート出版
- - ISBN: 978-4802401029
- - 発売日: 2020年8月4日
- - 価格: 2500円(税別)
- - 商品URL: Amazon
この復刻版教科書は、今後の国語教育や道徳心の育成に役立つ貴重な教材であるといえるでしょう。