株式会社BiPSEEのうつ病治療への挑戦
株式会社BiPSEEは、東京都渋谷区を拠点に、最先端のVRデジタル療法を開発している企業です。最近、高知大学医学部附属病院との共同研究において、うつ病患者に対するVRデジタル療法(VRx)の特定臨床研究を完了し、対象患者のうつ病スコアが大幅に減少したことを確認しました。この成果に基づき、BiPSEEは治験準備を進めています。
うつ病とその治療の現状
世界中でおよそ3億人がうつ病に悩んでおり、経済的な損失は実に約250兆円に上るとされています。従来の治療法としては薬物療法が一般的ですが、最初の抗うつ薬が効果を示すのは3人に1人にしか過ぎません。再発率も60%以上と高く、患者にとって治療の選択肢は限られています。また、薬剤調整が頻繁に必要であり、副作用のリスクも常に考慮せねばなりません。
特に、反すう(ネガティブな思考の反復)が関連する大うつ病性障害(MDD)は、抗うつ薬が効きにくいことで、新しい治療法の需要が高まっています。現在、執拗な思考に悩む患者のための治療法としては、認知行動療法(CBT)があるものの、その普及率はわずか6.2%に留まっています。このような背景から、BiPSEEのVRデジタル療法(VRx)は、新たな選択肢として期待されています。
VRデジタル療法(VRx)の特徴
BiPSEEが開発するVRデジタル療法は、反すう症状を軽減し、抑うつ症状の改善を図るためのデジタル治療プログラムです。このプログラムは、以下の3つの特徴を有しています:
1.
メタ認知療法に基づくスキル習得:本プログラムは、認知行動療法で用いられるメタ認知療法や焦点化認知行動療法を中心に構成されており、8週間のプログラムとして患者のさまざまなスキルを育むことを目指します。
2.
没入感のある体験:VRとスマホアプリを統合したプログラムにより、患者は没入感を得られ、リアルな体験を通じて反すうや抑うつの背後にある感情や行動を探ることが可能になります。このアプローチは、行動変容や認知の変化を促進します。
3.
自宅でも学べる仕組み:クリニックへの通院を減らし、患者は自宅で自由に学べるよう設計されています。これにより、治療の負担を軽減しつつ、医師が患者に集中できる環境を整えています。
研究の概要と成果
本研究は、高知大学が主導し、臨床研究法に基づいて行われました。被験者は50名で、そのうち47名が実施に参加しました。本研究は、標準的な薬物治療(対照群)とVRデジタル療法を組み合わせた治療(介入群)の有効性と安全性を評価することを目的としています。主要評価項目は、8週後におけるHAM-D総スコアの変化量です。
今後の展望
今後、株式会社BiPSEEは2025年中に治験を開始し、医療機器としての承認を目指しています。また、研究結果については今後、論文発表も予定されており、公表されることが期待されています。高知大学の數井教授は、デジタルツールがうつ病治療における新たな選択肢を提供すると語っています。
まとめ
株式会社BiPSEEの挑戦は、うつ病治療において新しいページを開く可能性を秘めています。デジタル技術を活用し、患者の負担を軽減しつつ、効果的な治療を提供する意義は非常に大きいです。今後の成長と進展に大いに期待がかかります。