医療的ケア児に向けた映画館上映会が突破口
2025年春、NPO法人AYAの主催による『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』上映会が全国各地で開催されました。このプロジェクトは、医療的ケアや障がいを抱える子どもたち、そしてそのご家族に、映画鑑賞の楽しみを提供することを目的としています。
イベントの背景
医療的ケア児とは、日常生活の中で恒常的な医療的ケアを受けることが不可欠な子どもたちを指します。近年、厚生労働省の調査によれば、全国にはおよそ2万人の医療的ケア児が存在し、また障がい児は約90万人にのぼるとされています。このような中、NPO法人AYAは「スポーツ・芸術・文化を通じて、子どもたちの世界観が広がる場を提供します」という理念のもと、様々なイベントを企画しています。
今回の上映会が生まれたきっかけは、「映画館で映画を観たい」というご母親からの声でした。医療機器の音やケア行為が周囲に迷惑をかけるのではないかという不安から、通常の映画館では経験できない楽しみを求めることが難しい現状がありました。それを改善するため、特別な環境での上映会を開催する決意がなされました。
上映会の開催と参加者の声
3月22日から始まり、全国22会場で25回の上映会を実施し、延べ5,082人が参加しました。映画館では医療従事者とボランティアが同行し、参加者が安心して映画を楽しめる環境を整えました。具体的には、音や声が出ても問題ないように、シアターを貸し切りにして開催されました。
参加者からは「映画館で映画を観ることが出来てとても嬉しかったです」や「家族での思い出ができました」といった温かいコメントが寄せられ、多くの方々がこのイベントに感謝の意を示しています。中には、初めて子どもと一緒に映画館に足を運んだ親もおり、家庭にとって特別な時間となったようです。
医療的ケアを必要とする子どもたちへのインクルーシブな社会の実現に向けて
NPO法人AYAの代表、中川悠樹氏は、今回の上映会を振り返り「様々な障害や医療的ケアを必要とする子どもたちにも映画の楽しさを知ってもらえることは、社会の障壁を下げるための大きな一歩です」と語ります。今後もAYAは、全国を巡回しながら、引き続きこのような取り組みを展開していくとしています。
これまでに37都道府県での巡回を達成しており、残りの10県でも開催を目指して企画を進めていることが期待されます。特に、地方に住む医療的ケア児にとっては、このような体験が貴重であり、未来に希望を持ってもらうためにも非常に重要な活動です。
まとめ
この映画上映会は、医療的ケア児や障がい児に対する理解を深めるだけでなく、映画が持つインクルーシブな力を示すものでもありました。参加した家族ひとりひとりの心に残る素晴らしい体験は、今後の社会にとっても大きな意味を持つでしょう。NPO法人AYAの活動が今後もますます発展していくことを期待しています。