三菱電機とInria、信頼性の高いAI技術を共同開発
三菱電機株式会社(以下、三菱電機)とフランス国立デジタル科学技術研究所(Inria)は、AIシステムの信頼性を保証するための革新的な共同研究プロジェクト「FRAIME」をスタートさせました。このプロジェクトは、Inriaの大規模産学連携プログラム「DÉFI」の一環として進められ、フォーマルメソッドと呼ばれる数学的アプローチを用いてAIの信頼性を高める技術を開発することを目的としています。
AIシステムの信頼性の重要性
近年、AIの発展と普及は加速しており、多くの企業がAIを利用したシステムを提供する中で、これらのシステムがもたらすリスクの適切な管理が求められています。特にインフラやサイバーセキュリティー関連のシステムは、その誤動作が大きな損害に繋がる可能性があり、AIが出力する結果の信頼性の担保が非常に重要です。通常この信頼性評価には、網羅検証という手法が用いられていますが、これは時間とコストが膨大になるという課題があります。
プロジェクトの背景と協業の経緯
三菱電機の欧州現地法人であるMitsubishi Electric R&D Centre Europe(MERCE)とInriaは、2015年からフォーマルメソッドを利用した高精度な検証技術の共同研究を行ってきました。この新しいプロジェクト「FRAIME」においては、これまでの経験と知見を活かし、フォーマルメソッド技術と最新のAI技術を組み合わせて、AIの出力を正確に検証する新技術を開発します。この取り組みにより、信頼性の必要とされるAIの活用範囲を広げることを目指しています。
開発内容の詳細
この共同研究では、以下の三つの主要な内容に取り組みます。
1.
生成AIの出力をフォーマルメソッドで検証
生成AIによって生成された仕様書やプログラムに対し、フォーマルメソッドを使用してその正確性を理論的に証明します。これにより、信頼性の高いプログラムの生成とメンテナンスが可能となり、機器の安全な運用が実現されます。
2.
フォーマルメソッドと機械学習の融合
ソフトウェア工学におけるフォーマルメソッドと機械学習の特性を組み合わせることで、柔軟性と信頼性を持つAIプロセスの構築を目指します。この過程では、特にロボット制御システムなど、複雑な判断や制御が求められるAIの適用を考慮しています。
3.
ユーザー、AI、フォーマルメソッドの連携
ユーザーとAI、そしてフォーマルメソッドの間にフィードバックループを確立し、最小限の操作でAIの出力を迅速かつ自由に調整できる環境を整えます。この方法により、手戻りを大幅に削減し、高い信頼性を維持しながらリードタイムの短縮やコストの削減を可能にします。
今後の展望
「FRAIME」プロジェクトでは、信頼性と実用性を兼ね備えた次世代AI技術の実現に向けて、実証実験(PoC)の実施を計画しています。また、オープンソースプロトタイプの公開、学術論文の発表、新たな応用分野の展開などを通じて中長期的なイノベーションを推進します。安心・安全な社会づくりに向けて、持続可能な技術の研究開発を進め、優れた若手研究者の育成にも力を入れる方針です。
三菱電機とInriaについて
三菱電機は、1921年の創業以来、社会システムやエネルギー管理、防衛、宇宙技術、デジタルイノベーションなど様々な事業を展開しています。2024年度の連結売上高は5兆円を超え、世界中に展開する200以上のグループ会社と15万人以上の従業員を擁します。Inriaはフランスの国立研究機関で、デジタル技術に特化した研究やオープンソースの支援、起業に向けた取り組みを行っており、先進的な研究を推進しています。
この新たなプロジェクトによって、AI技術の可能性が広がり、信頼される社会の実現に向けた一歩が踏み出されることに期待が寄せられています。