大阪・関西万博で再利用の未来を切り拓く「旅するCLT」の革新
大阪・関西万博での新たな挑戦「旅するCLT」
2025年の大阪・関西万博において、KUMA LABと東京大学がしぼった新プロジェクト「旅するCLT」が発表されました。このプロジェクトは、日本政府館で使用されたCLT(直交集成板)を再利用し、サーキュラーエコノミーの実現を目指しています。
プロジェクト概要
「旅するCLT」は、CLTパネルを一度だけ再利用するのではなく、建物の解体と再利用を繰り返しながら、全国を巡ることを目指しています。最終的には2027年以降、日本各地で万博の思い出を刻んだCLTパネルで構築された建築物を実施する計画です。この壮大なビジョンの実現には、東京大学の青木謙治教授や権藤智之准教授との産学協働が欠かせません。
サーキュラーエコノミーへの移行
本プロジェクトは、解体材の再利用に関する検証を行いながら、持続可能な住まいづくりを進める方法論の確立を目指します。具体的には、既存の建材の履歴や記憶を読み取り、新たな設計や建築につなげていくことが重視されています。デジタルファブリケーション技術を利用した設計プロセスを通じて、再利用の可能性を探るとともに、一般社会にその価値を広めていきます。
解体・再利用のプロセス
プロジェクトにおいては、以下の4つのテーマが印象的です。
1. Design: 既存の材料から新しいアイデアを生み出すための設計を行います。解体材の個性を尊重し、新たな魅力を引き出すことが求められます。
2. Material: 解体材に第二の役割を与えるために、性能評価指針を整備していきます。これにより、解体材が「廃材」とならず、再利用が可能になるように努めています。
3. System: 解体材の再利用が一般化するためのシステム作りが必要です。設計から生産、物流までの一連のプロセスを再構築し、持続可能な循環を実現していきます。
4. Emotional Value: 再利用材が持つ感性の重要性にも注目しています。木の手触りや、過去の痕跡、環境への配慮といった無形の価値を大切にする姿勢が求められます。
プロジェクトの進行
この取り組みは、2027年までの長期にわたるプロジェクトで、段階的に進行していきます。準備段階では、東京大学の講義を通じて研究を深め、学生たちとともに再利用材の仕分け方法や制作物の方向性についての検討を行います。そして、CLTを使用したモックアップの製作や、実際に資源循環センターへのフィールドワークを行いながら具体的な企画を練っていきます。
結論
「旅するCLT」は、再利用材をただの資源として扱うのではなく、文化として根付かせることを目指すプロジェクトです。未来の住まいの在り方を考え、持続可能な社会の実現に向けた取り組みが新しい時代を迎えようとしています。積水ハウスと東京大学の共創により、これからも様々な挑戦が期待されます。