未来のコミュニケーションを変える痛覚共有技術
最近、痛みを脳波から測定し、個々の感じ方に応じて痛覚を共有できる技術が開発され、注目を集めています。この革新的な技術は、株式会社NTTドコモとPaMeLa株式会社の共同研究の成果であり、痛みという主観的な感覚を他者と共有することを可能にするものです。
この技術は、ドコモが開発した「人間拡張基盤®」とPaMeLaが開発した脳波測定技術を融合させたもので、これまでに触覚や味覚などの共有は実現してきましたが、痛覚の共有は初の試みです。具体的には、痛感を持つ人の脳波を分析し、その感覚を数値化して客観的に可視化します。さらに、これを受ける側の感度に応じて変換し、痛みの感覚をリアルタイムで共有します。
痛みは、身体的・心理的な面を含む非常に主観的な経験です。これまで、他者に自分の痛みを言語化して伝えることは困難で、周囲の人々はその痛みを推測するしかありませんでした。しかし、この新技術を使用すれば、「Aさんの痛みをBさんがどのように体感するのか」ということが、より明確に理解できるようになります。たとえば、Aさんが感じる「50の痛み」はBさんにとってどのくらいのものなのか、またAさんが普段よりもどれほどの痛みを感じているのかを、より正確に伝えることが可能になります。
この画期的な技術は、医療現場の診断支援や福祉のリハビリテーションの分野での応用が期待されています。さらに、仮想現実(VR)やゲームの世界では、この痛覚を活用することで、より没入感のある体験が実現できるでしょう。心理的なダメージを可視化する手段としても有効で、カスタマーハラスメントやSNS上での誹謗中傷といった、心の痛みを理解し合う手助けになることが期待されています。
この技術は、2025年10月14日から幕張メッセで開催される「CEATEC 2025」において紹介される予定です。ここで、多くの人々にその実用可能性が示されることでしょう。
ドコモとPaMeLaは、今後もこの技術のさらなる向上と実用化に努め、新しいコミュニケーション文化や価値を提供し、人々がより豊かな生活を送ることに貢献していくことを目指しています。
新しい技術によって痛みの共有がもたらす未来が、私たちのコミュニケーションの在り方を根本から変えていくかもしれません。今後の進展に注目です。