次世代分娩検知システム「馬もり」の誕生
和歌山県和歌山市に本社を置くノーリツプレシジョン株式会社は、AI技術を活用したサラブレッドの分娩検知システム「馬もり」を2024年11月に発売することを発表しました。この製品は、北里大学獣医学部との共同研究を通じて開発されたもので、繁殖生産者に新しいスマートな解決策を提供することが期待されています。
「馬もり」の機能と特徴
「馬もり」は、サーマルカメラを利用した非接触式センサーで、母馬の行動や体調の変化を24時間監視します。分娩兆候があらわれた際には、即座に繁殖生産者のスマートフォンに通知が届くため、迅速な対応が可能です。また、馬房の明るさを変えずにリアルタイムで映像をチェックできるため、母馬への配慮も万全です。
開発の背景
サラブレッドは季節繁殖動物で、分娩日は予測できますが、実際の出産日にはばらつきがあります。そのため、繁殖生産者は分娩予定日の近い母馬に常に目を光らせる必要があります。特に夜間の出生が80%に達するため、分娩監視作業は肉体的・精神的にも負担が大きいのが現実です。
ノーリツプレシジョンは、これらの課題を解消するために、「牛わか」という肉用牛の分娩検知システムを2021年に発売しましたが、サラブレッドに特有の分娩兆候に適用する必要がありました。このニーズを受け、複数の繁殖生産牧場と連携し、「馬もり」の開発が行われました。特にサラブレッドに特化した分娩兆候を検知するために、多くのデータをもとに研究を重ね、成功を収めました。
高精度な分娩兆候の検知
「馬もり」は、分娩兆候を検知するための高精度なAI技術を駆使しています。動画による分析に加え、サーマルカメラの映像から特徴的な行動や体表面温度の変化を検出し、95%という高い確率で分娩を事前に察知します。通知システムは、行動量の増加を示すフェーズ1と、出産に近い状況を示すフェーズ2という2段階で知らせます。
簡単な設置と安全性
このシステムの利点は、簡単に取り付けられる点です。特別な金具を使用することで、さまざまな馬房に対応可能で、予め用意しておけば本体のみの移設で別の馬房への設置ができます。また、作業者の安全も考慮し、非接触・非侵入で検知が行えるため、繁殖生産者の精神的な負担も軽減します。さらに、SIMカードを内蔵し、インターネット環境のない場所でも運用可能という利点があります。
販売情報
「馬もり」は、2024年11月からの発売予定で、購入はノーリツプレシジョンの公式営業に問い合わせる形となります。特定地域では販売代理店を通じた購入も行われます。
会社概要
ノーリツプレシジョン株式会社は1951年に創業し、写真処理機器や介護機器の開発・販売を行っています。2011年に法人化され、現在も高品質な製品作りに努めています。
この「馬もり」の発売は、サラブレッドの繁殖分野に大きな一歩をもたらすことでしょう。今後、どのような影響をもたらすのか、業界からの注目が集まります。