デジタル公共財の未来を切り拓くBeacon Labsの挑戦
デジタル公共財の持続的な発展を目指す一般社団法人Beacon Labsが、Fracton Ventures株式会社のR&D部門の活動を引き継ぎ、2023年に正式に設立されました。この新たな研究機関は、インパクト評価や資金提供メカニズムの研究開発を通じ、デジタル公共財を効果的に支える仕組みの構築に挑戦しています。
これまでの活動とその成果
Beacon Labsの前身であるFracton Researchは、デジタル公共財に関連する研究を進め、特にEthereumエコシステムを中心に資金提供メカニズムに関する実証的な分析を行ってきました。2023年10月には、運営モデルの異なる助成プログラムの定量的比較というユニークな研究を通じて、民主的な運営モデルが資金を比較的均等に分配する傾向にある一方で、トップダウン型のモデルでは受給額にばらつきが生じることを明らかにしました。この知見は、タイのバンコクで開催されたEthereum Foundation主催の国際カンファレンスDevcon SEAで発表され、多くの注目を集めました。
この研究結果は、Beaton Labsの公式サイトやYouTubeチャンネルを通じて広く公開されており、多くの専門家や関心を寄せる人々に影響を与えています。
Funding the Commonsでの取り組み
さらに、Funding the Commons Bangkokでは助成プログラム分析に関するワークショップを開催し、参加者と共にIES(Impact Evaluation Service)プロトコルを開発しました。このプロトコルは、インパクト評価者のレポートを評価し、適切なインセンティブを与える仕組みに焦点を当てています。この取り組みは、チェンマイで実施されたFunding the Commons Builders Residencyを通じて成形され、そこでのハッカソンでは高く評価されました。
また、Beacon Labsは日本で初めてのFunding the Commons Tokyoを共催し、Ethereumの開発者やNPO、研究者、行政関係者が集まり、デジタル公共財に対する資金提供の新たな方法について議論しました。このイベントは、Ethereumエコシステムと実社会との架け橋となる重要な試みとなりました。
デジタル公共財の課題
デジタル公共財はオープンソースソフトウェアなど、インターネットを駆使して広がっているものですが、その維持や供給には必要なリソースが確実に開発者や支援者に届く仕組みが求められます。特に、Ethereumエコシステムにおいては多くの資金提供の実験的取り組みが行われていますが、その中でもQuadratic Funding(QF)という寄付の仕組みは特に注目されています。QFは寄付の総額ではなく、「どれだけ多くの人から支持を受けているか」という点を重視し、広範な関心を集めやすい仕組みです。近年では、実社会でもその応用が進んでいます。
しかし、特定の仕組みにだけ依存することには限界があります。公共財はそれぞれ異なる成果を求めるため、単一の価値基準では十分に評価できないのです。そのため、様々な価値観を考慮しつつ、多角的な視点から資金提供の仕組みを構築することが重要となってきます。
Beacon Labsのミッションと取り組み
Beacon Labsは、「多元的な価値を尊重し、デジタル公共財を公平かつ納得感を持って支援できる仕組み」の構築を目指しています。具体的には、以下の方針で取り組んでいきます。
1.
デジタル公共財の評価手法の研究
社会的・文化的インパクトを適切に評価する方法論を開発し、その応用を通じて支援システムを構築します。
2.
資金配分設計の複数の評価モデルの統合
一つの基準に固執せず、多角的な観点での資金循環モデルを設計し、より多くの関係者の納得を得られる仕組みを考案します。
3.
プロジェクトごとの評価基準の策定
ソフトウェア開発のプロジェクトであれば利用者数や改善速度、教育事業であれば学習成果や地域貢献度など、各分野に応じた評価指標を設定します。
このように、Beacon LabsはEthereumエコシステムで得た知見を基盤に、より広範な社会課題へも応用を目指して活動していきます。
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