タイでの画期的なバイオ炭実験の開始
Green Carbon株式会社が、タイ王国の主要な教育機関であるマヒドン大学およびタイ天然ゴム公社(RAOT)と提携し、ゴム苗木の成長を支援するためのバイオ炭実験を開始しました。これは、タイにおける農業廃棄物の管理と土壌肥沃度の低下という二つの課題に対しての新たな挑戦ともなります。
実験の背景と目的
タイは2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目指しています。その中でも農業分野が主要な温室効果ガスの排出源であることから、持続可能な農業への移行が求められています。また、タイのゴム農地における土壌の劣化や肥料コストの上昇も深刻な問題です。
このような状況下で、本プロジェクトは、ゴム苗木の成長にバイオ炭が与える影響を科学的に検証するため、温室内での管理型実験を行います。これにより、農業残渣を有効利用し、農業の持続可能性を高めるための環境改善を目指します。
実験の概要
本プロジェクトの実施地点は、マヒドン大学のサラヤキャンパス内にある温室施設です。実験期間は2025年8月から2026年1月までで、Green Carbon社、RAOT、RRIT(タイゴム研究所)が協力し、苗木の成長に関する様々なデータを収集します。実施内容には苗木の高さ、バイオマス、根の発達、さらには土壌中の栄養保持や微生物活動の観察も含まれます。
使用されるバイオ炭
本実験で用いるバイオ炭は、タイ国内で発生するゴム木廃材から作られており、高い有機炭素含有率(75%以上)と多孔質構造を持ち合わせています。これにより、土壌改良に寄与することが期待されています。実験の前に土壌とバイオ炭の初期分析も終了しており、万全な準備を整えています。
期待される成果と展望
本実験の結果は、2025年末には中間報告として共有され、2026年2月には最終報告が行われる予定です。結果が成功した場合、RAOTの農家支援プログラムにバイオ炭の利用を正式に組み込むことが計画されています。これにより、タイ国内でのバイオ炭の利用拡大が期待されます。
Green Carbonも、年間3,000トン以上のバイオ炭の販売を目指し、国際的なカーボンクレジットの創出にも取り組んでいく予定です。2030年までには年間15万トン以上の供給を目指し、持続可能な農業の実現を後押しします。
関係者の声
このプロジェクトに関してのコメントも寄せられています。Green Carbonの原田亮氏は、「このプロジェクトは、温暖化対策と農業支援を両立させる新しいモデルです」と述べており、業界の注目が集まっています。また、マヒドン大学のWanwisa Pansak教授は、「この研究により、健康的なゴム苗木の生産と土壌改善が達成されるだろう」と期待を寄せています。タイゴム庁の代表も、ゴム資源の活用を進めることで持続可能なゴム産業を目指す意向を強調しています。
バイオ炭によって、タイの農業に新たな可能性をもたらすこの実験の進展が、今後注目されます。