SherLOCKが提案する自律型AI評価の必要性
2025年12月1日、慶應義塾大学日吉キャンパスで行われた「人工知能学会 第4回SIG-SEC研究会」において、AIセキュリティスタートアップのSherLOCK株式会社が画期的な研究結果を発表しました。代表取締役CEOの築地テレサさんは、従来のAIセキュリティ評価が限界を迎えていることを指摘し、AIがAIを評価する自律型評価エコシステムの必要性を強調しました。
従来の評価手法の限界
大規模言語モデル(LLM)の進化により、AI業界は急速に進展しています。その中で、従来のレッドチーミング手法には明確な限界が見えてきました。特に、以下の3つの壁が大きな課題となっています。
1.
攻撃空間の増大:AIの機能が拡張されるにつれて、潜在する攻撃のパターンは指数関数的に増加しています。人間が手動でこれら全てのパターンをテストすることは事実上不可能です。
2.
ロングテールリスクの死角:開発者が気付きにくい稀ではあるが致命的なリスクは、従来の手法ではほとんど捉えられていません。これがAIセキュリティにおける重要なリスクとなります。
3.
多段階攻撃の非再現性:AIエージェントの複雑な攻撃パスを人間が設計するのは極めて困難です。
このような背景から、SherLOCKはAI対AIの自律型評価への転換を提唱しています。
自律型評価の重要性
SherLOCKが提唱する「AI対AI」のアプローチは、攻撃的なAIと防御的なAIが相互に競い合うことで、システム全体の堅牢性を向上させるものです。
- - 動的な防御:敵対的生成ネットワーク(GAN)や強化学習を利用して、攻撃側AIが新たな攻撃手法を編み出すと、防御側AIは即座にそれを学習して防ぐことができるようになります。これは自己進化型の防御システムを構築するための鍵となります。
- - 国際的な潮流との合致:このアプローチは、英国や米国で進められているAIセキュリティ評価の国際的な潮流とも一致しています。
今後の展望
SherLOCKは、脆弱性の発見から修復までAIが自律的に完結する未来を目指しています。
- - 高度な攻撃シミュレーション:攻撃戦略を考える「司令塔AI」と実行する「実行部隊AI」を分けた階層型アーキテクチャを開発しています。
- - 自律的な修復:AIが自動で脆弱性を見つけ出し、即座に修正を施す体制を整えることで、セキュリティ担当者が不在の時でもAIシステムが自己防衛を続ける環境を実現します。
登壇者のコメント
研究発表の中で、築地社長は、「AIの進化は人間の管理を遙かに超える速度で進展しています。AI技術を活用して、AIを堅牢にする時代への転換が必要です。」と述べました。
結論
SherLOCKの新たな提案は、AIセキュリティの未来における重要なステージを示しています。今後も、技術的な革新と国際的な潮流に乗りながら、安全で信頼できるAI社会を築くための取り組みが期待されます。