新たなデザインを通した都市の共生
2023年、Comoris DAO合同会社が法政大学デザイン工学部システムデザイン学科のアフェクティブデザインラボ(ADL)と東京工科大学の片柳研究所との連携を発表し、新しい産学共同プロジェクトが始動しました。本プロジェクトは「都市の中の多種と共にデザインする」をテーマに、都市生活における自然要素との共創的なライフスタイルのあり方を探求するものです。
プロジェクトの根幹には、都市空間を人間中心から脱却し、多様な生物との共存を視野に入れることが求められています。Comorisが手がける都市の空き地を活用したシェアフォレストは、その舞台となり、学生たちはセンシングやフィールドワークを通じて動植物との関係性を見つめ直していきます。
都市生活における「他種の存在」への意識
近年、都市は人間の利便性を重視した環境として整備されていますが、それによって共存する生物たちとの関係が希薄になりがちです。本プロジェクトでは、この視点を問い直し、他の生物とともに都市を生きる新たなデザインを模索します。プロジェクトでは、都市の自然環境への認識を深めるために、まずは「気づく」ことが重要視され、フィールドワークを通じて動植物や自然の存在を感じ取るところから始まります。
フィールドワークの取り組み
プロジェクト参加者は、Comoris周辺や自宅近隣でフィールドワークを行い、視覚だけではなく、匂いや音、風、湿度の変化など、多方面から都市に生きる他種の存在を観察します。こうした感覚的なアプローチを通じて、新たな発見や気づきを得て、人間と生物との関係を深めていくのです。
コラボレーションの深化
次のステップでは、センシングした結果に基づいて、人と他種との関係を豊かにするための新たな表現や仕組みを創出します。この段階では、AIを活用してキャラクター化したり、体験型の可視化を行ったり、空間設計に反映させるなど、都市生活をよりよいものにするための提案がなされます。具体的には、動植物の生態を活かした設計や、コミニュティ活動を通じた相互の理解と「ケア」を促すアプローチが展開される予定です。
プロジェクトの展望
2025年5月に始動する本プロジェクトは、6月の最終発表会を目指して段階的に進行していきます。進行中は、レクチャー、フィールドワーク、アイデア提案、プロトタイピングを行い、得られた成果を通じて社会へ向けた発信を行う予定です。特に、研究成果は論文化され、展示を通じて広く伝えられることが期待されています。また、Comorisでの実装を皮切りに、公共空間の活用や地域との連携を深めていくことも視野に入れています。これにより、持続可能な都市生活の実現に向けた継続的な展開が計画されています。
大学との協力関係
法政大学のアフェクティブデザインラボ(ADL)は、社会の現実的な課題や未来の可能性に感情や知覚を重視したデザインアプローチを採用しています。東京工科大学の片柳研究所では、エモーショナルエンジニアリングに特化した研究を展開しており、プロジェクトではセンシング技術やデータの可視化を通じた新しい環境デザインの提案がなされます。両大学の専門性を生かした本プロジェクトは、多様な生命との共生を目指して、観察から実装に至るまでの一貫した実験的プログラムに取り組むものです。
Comorisのビジョン
Comorisは、都市の空き地や遊休地を活用して小さな森を形成し、地域コミュニティと協力しながら、持続可能な都市生活を実現するメンバーシップ制のシェアフォレストサービスを提供しています。地域の環境を重視しながら、地域住民が自然とともに快適に過ごす方法を模索しています。これからの都市生活には、場所の育成や地域活性化が一体となって進められ、より多様な価値が創出されていくことでしょう。これらの活動が新たな都市の風景を創り出すことに期待されています。