担い手不足を乗り越える地域遺産支援プログラムの始動
公益財団法人日本ナショナルトラスト(以下、JNT)は、地域文化遺産の保存と活用を促進するための新たな取り組み「地域遺産支援プログラム」を開始しました。このプログラムでは、地域の担い手不足や資金調達の課題を解決するため、全国の民間団体を支援し、文化遺産を次世代に引き継ぐ仕組みを構築します。
文化遺産を取り巻く現状
日本各地では、人口減少や地方財政の厳しさが進行しており、その影響で多くの地域では文化遺産の保存や活用が困難な状況に置かれています。このままでは、地域の歴史や文化を物語る大切な資源が失われる恐れがあります。そのため、地域の担い手が外部の団体や専門家と連携し、共に支え合うことが重要です。
「トラスト・エール」の目的
JNTは、過去50年間、文化遺産の保護に努めてきましたが、今後は「日本型ナショナルトラスト」を目指し、具体的な施策として「地域遺産支援プログラム」を立ち上げました。このプログラムは、地域文化遺産を次の世代に継承するために、持続可能な支援体制を築くことが狙いです。
4つの民間団体を採択
今回のプログラムでは、初めての公募を通じて以下の4団体が選ばれました:
1.
NPO法人“矢中の杜”の守り人(茨城県つくば市):旧矢中家住宅を中心に防災と文化の両立を図ります。
2.
門脇家住宅等保存協力会(鳥取県大山町):地域参与型の持続可能な活用方法の構築を目指します。
3.
滝上ふるさと研究会(北海道滝上町):和ハッカ文化とその保存を図る取り組みを進めます。
4.
東かがわ市引田町家マッチングプロジェクト(香川県):町家の活用を進め地域の魅力を高めます。
今後の支援活動
このプログラムの下、JNTは各団体に対し、さまざまなサポートを提供します。具体的には、地域文化遺産の保存や活用に関する情報やノウハウの提供、企画支援、活動に関する幅広い情報発信、市民への啓発活動への協力などが含まれます。
資金については、各団体が自ら調達し、必要な専門家をJNTから派遣する仕組みとなっています。これにより、地域ごとの特性に応じた柔軟な支援を実現し、持続可能な活動が展開されることを期待しています。
文化遺産の保存を支える地域の未来
オーバーツーリズムへの懸念が高まる中、地域遺産支援プログラムは、地域が自らの文化遺産を守り、活用できる仕組みを構築することを目指しています。これが実現すれば、地域の文化と歴史が次世代に受け継がれ、地域の活性化にもつながるでしょう。
JNTは、今後3年間を通じて、このプログラムを実施し、各団体と協力して文化遺産の支援に取り組みます。地域の皆様と共に文化を守る試みが広がることを願っています。
JNTの活動概要
公益財団法人日本ナショナルトラストは、文化財や自然の景観の保全を目的とした活動を1970年から開始し、地域の皆様と協力をしながらその努力を続けてきました。今後も、多くの地域での取り組みを通じて、文化遺産を次世代に受け継ぐ使命を果たしていきます。