ナウマンゾウの古代DNA解析成功　進化の謎に迫る最新研究

ナウマンゾウの古代DNA解析に成功

国立科学博物館を中心とする国際研究チームが、ナウマンゾウの古代DNA解析に成功したという画期的な成果を発表しました。これは日本列島に生息していた絶滅ゾウ、ナウマンゾウ（Palaeoloxodon naumanni）の化石から得られたもので、世界初の試みとなることから、多くの専門家たちが注目しています。

ナウマンゾウの背景

ナウマンゾウは、約2万2千年前に絶滅したと推測されており、日本全国から約300ヶ所で2000点を超える化石が発見されています。このゾウ属は、更新世にユーラシア全域で広がったパレオロクソドン属（直牙象）に属し、アジアからの古代DNA解析の成功事例がこれまで存在しなかったことから、進化史には大きな空白が存在していました。

今回の研究では、青森県で発見されたナウマンゾウの臼歯化石2点（約4万9千年前と約3万4千年前）からミトコンドリアDNAの解析に成功したことが特徴です。これは日本国内最古の化石標本からの古代DNA研究として注目されています。

研究の経緯と成果

ナウマンゾウのDNA解析では、高温多湿な日本の気候が遺伝子の保存に不利な環境である中で探究が行われました。特に、優れた保存状態の化石からDNAを抽出するために、最新技術「myBaitsキャプチャ法」が用いられ、ミトコンドリアゲノムのドラフト配列の再構築に成功しました。この成果は、ナウマンゾウが約105万年前にユーラシアで最古の直牙象の系統であることを示しています。

日本列島の役割

研究によると、ナウマンゾウは大陸で派生的な形態が発展する一方、日本列島では原始的な形態を保持し続けたことが確認されました。このことは、日本列島が古い系統が生存する特別な環境、いわゆる「レフュジア」として機能していた証拠となっています。ナウマンゾウは、ユーラシア全域の進化史における特殊な位置を占めることが明らかになりました。

日本におけるナウマンゾウの位置づけ

ナウマンゾウは、その進化の過程において「シュトゥットガルト型」の頭骨形態を有しています。この発見により、パレオロクソドンの頭骨形態の遺伝学的関係が初めて示され、従来認識されていた形態の違いが進化の異なる段階を示すものであることが立証されました。これにより、ナウマンゾウの形状や生態の復元がより正確に行える可能性が広がります。