メタバース役所でのAI相談員試験運用が実施される
大日本印刷株式会社(DNP)、日本加除出版株式会社、株式会社Hexabaseの三社が共同で、3次元の仮想空間「メタバース役所」を用いたAI相談員の実証事業を2025年3月に行いました。この取り組みは、法律に関する専門知識を持つ「離コンパス」のAI相談員が、生活者の悩みに対してサポートを提供するものです。
実証事業の背景と目的
この実証事業は、行政サービスのデジタルトランスフォーメーション(DX)、すなわち、より利用しやすいサービスの実現を目的としています。特に、住民のストレスを軽減し、気軽に相談できる環境を整備するために、AIが持つ特性を活かすことが期待されています。実際に参加した生活者からは、「匿名で24時間利用できる」点が好評で、多くの人がAI相談員を通じて心の不安を軽減したとの声が寄せられています。
参加自治体と利用者の反応
実証事業には、国内の7つの自治体が参加しました。実施期間中には105名のユーザーがメタバース役所を訪れ、75件の相談が行われました。利用者の年齢層は主に30代から50代と多岐にわたり、特に離婚や子育てに関する相談が目立ちました。また、約85%の利用者がAIとの対話を自然であると感じ、約65%が心の軽減を実感したと回答しています。
ユーザーからのフィードバック
参加者からは、「登録不要」「匿名性がある」「24時間アクセス可能」といった点が高評価でした。AIによるカウンセリングの利便性は、心理的な抵抗を下げるポイントとして重要視されています。さらに、アンケートでは、具体的な情報提供や個別対応への期待も寄せられており、幅広い専門知識を求めるニーズがあることが確認されました。これにより、今後のサービス展開においても様々な課題への対応が求められることが分かりました。
自治体の声と今後の展望
参加した自治体の代表者からは、このAI相談員サービスの拡充が住民にとっての新しいアクセス手段として期待されているとの意見がありました。特に、自治体、つまり行政としてのDX化の進展によって、「誰一人取り残されない」サービスの提供可能性が高まる点が強調されました。また、専門的な相談だけでなく、単純な問い合わせまでAIでカバーできる可能性も見込まれています。
さらなる発展に向けて
DNP、日本加除出版、Hexabaseは、今回の実証事業で得られた知見をもとに、AI相談員の改善や新しい機能の追加を行う方針です。家庭や離婚に関する相談だけでなく、生活全般にわたる悩みや課題に対応できるようなラインナップの拡充が見込まれています。また、より複雑な課題が発生した際には、AI相談員から人間の職員に相談内容を引き継ぐハイブリッドなシステムの構築も視野に入れています。
この未来的な取り組みは、メタバースという新しいインフラの中で、社会全体の福祉を向上させるための第一歩となるでしょう。今後もこの進化を追い続け、生活者がより安心して相談できる環境の整備に寄与していくことが期待されています。